修繕積立金の値上げ、逃げたらどうなるのか
NHKの朝の情報番組「あさイチ」で、「マンションが老いていく・・・あなたはどうする?」という特集が組まれていた。
また、とある朝の情報番組の視聴者からのメッセージコーナーに、「築3年のマンションに住んでいるが、来期からの修繕積立金が3倍に値上げされる」という投稿されていました。
築3年で3倍は、タチガ悪いな・・・と思いました。 昨今の人件費高騰や資材価格高騰だけの理由でこうはならないでしょう。
しかし、多くの管理組合で修繕積立金の値上げは避けて通ることが出来ず、最も重い課題になっています。
必要な修繕積立金の値上が出来ないままでいるとどうなるのかを、考えてみましょう。
- 1. 修繕積立金の値上げ、逃げたらどうなるのか
- 2. 修繕積立金の値上げは避けられない
- 2.1. なぜ、修繕積立金の値上げは避けられないのか
- 2.2. 修繕積立金の値上げ、可決できなくなる理由
- 2.3. 長期修繕計画書が信用できないから値上げできない?
- 2.4. 値上提案 ~過去の理事は何をしてきたのか~
- 3. それぞれの思惑
- 3.1. 対処① 見極めて売却する
- 3.2. 対処② 値上げを検討する委員会を設置する
- 3.3. 手遅れもある
- 4. 現実を直視することから始める
- 4.1. 値上が必要? フローで確認、修繕積立金の値上げ
- 4.2. 修繕積立金の値上げ問題から逃げると・・・
- 5. 結論、マンションの問題は「お金」の問題
- 5.1. 必要な額を徴収し、不要な支出を減す!それは、所有者が自らが行うしかない。
修繕積立金の値上げは避けられない
なぜ、修繕積立金の値上げは避けられないのか
ほとんどのマンションは、新築時に部屋を売りやすくするために、あえて管理費や修繕積立金は低く設定されています。
築10年頃までは、高額な修繕の発生も少ないため売り出し時に設定された管理費・修繕積立金の値上げは必要ないような設計になっていることでしょう。
しかしながら、第1回目の大規模修繕工事を管理会社や設計会社に丸投げする形で実施してしまうと、修繕積立金は底をついてしまう組合が多いのではないかと思います。
そこで、管理会社は修繕積立金の値上げを提案するのです。
管理費や修繕積立金は値上前提で制度設計されています。それも、一度や二度の値上げでは終わりません。
マンションは修繕積立金の値上げは避けられない仕組みなのです。
わたしの知人の不動産販売業を営む方は、「修繕積立金は上がり続けることは承知の上ででマンションを購入している」とおっしゃっていました。
しかし、不動産業界に身を置く方以外で、この事実をで承知している方がどれほどいるでしょうか。
修繕積立金の値上げ、可決できなくなる理由
上記のような仕組みでプランされているマンションの修繕積立金ですが、さまざまな理由で値上げは困難となります。
- 管理組合が問題を先送りする癖がある
- 問題に取り組もうとする人がいない
- 値上反対派の声が大きい
- 所有者により財政状況が大きく異なる
- 所有者が高齢化し自分が生きている間は値上げを望まない人が多い
- 財政危機から目をそらしている
- 長期修繕計画が信用できない
修繕積立金の値上げができない理由を上げればきりがありません。
ただ、はっきりしていることは、所有者に”お金の余裕がなくなる”ことが最大の要因と考えられます。
長期修繕計画書が信用できないから値上げできない?
長期修繕計画書が信じられないから、修繕積立金の値上げに踏み切れないという管理組合があります。
なるほど、多くの組合では長期修繕計画書は管理会社が作成し、見直しも行われていないようなものかもしれません。
管理会社が”儲ける”ために、多額の支出を伴う計画書を作成しているのではないか?という疑念があるのも理解できます。
その場合、直ちに自分たちの力で長期修繕計画書の見直しを行ってください。手遅れになることを防ぐためです。
値上提案 ~過去の理事は何をしてきたのか~
修繕積立金の値上げを議論し総会に上程する理事会を批判する組合員(所有者)が稀にいます。
もし、この組合員が過去に理事として積立金の値上げに取り組んだ経験があるなら、批判する資格があると思います。
しかし、自分が理事の時に問題を先送りをしておきながら、重い課題に挑んだ理事会に対して批判を述べることは、お門違いと言う他ありません。
10年以上のあいだ必要な値上げを放置した管理組合において、責任を免れる組合員がどれほどいるでしょうか。
それぞれの思惑
マンションは、それぞれの所有者の置かれた立場が異なり、舵取りが難しい共同所有物です。
新築当初は、30~40代の現役世代が多く収入の増加も見込めることが多いでしょう。しかし、築30年頃には現役世代が激減し、40年頃には高齢者の方ばかりが居住していることも珍しくありません。
住み替えや代替わりがあるマンションでも、大多数を占める高齢者世帯と意見が異なることが多くなるでしょう。
修繕積立金の値上げを受け入れることが困難な所有者と、値上してでも維持管理を続けるべきだという所有者とで話し合いが硬直し、値上げできずに放置された場合、一所有者としてどのような手が打てるでしょうか。
対処① 見極めて売却する
マンションの収支報告書や長期修繕計画書を確認すれば、管理組合の現状ばかりでなく将来を予測することも可能でしょう。
例えば、多額の借入を予定した長期修繕計画であったり、大規模修繕工事を長期間行っていなかったり、毎年赤字会計を放置していたり。修繕積立金から管理費会計へ費用を貸し付けているなど、チェックするポイントがあります。
マンションの特性と財政状況および市場価値を照し合せた上で、所有者の生活設計を考慮し売却するという手段を選択する場合があります。
※あなたのマンションの管理状況を診断し、見極めのお手伝いをします。詳しくは「管理状況診断」をご確認ください。
対処② 値上げを検討する委員会を設置する
運のよい管理組合なら、値上げの必要に迫られた時期に重い腰を上げて値上げを実行する理事長や理事が出現するでしょう。多くの所有者が嫌がって先送りにする難題に取り組むことが出来る”解決者”です。
しかし、そのような適任者の出現を待つだけではいつまでも値上げは実施できません。
自らが声をあげて、値上げ検討のための委員会を発足させるしかありません。
手遅れもある
いつまでも値上げできずに必要な工事が出来ずにいると、管理会社が去っていくかもしれません。
これは非常に重大な事象で、管理組合財政再建が「手遅れ」になっている可能性が高いと考えられます。
管理委託費の値上げが出来ないからという理由で、委託契約の更新を拒んでいるように見えますが、実際は管理費や修繕積立金の値上げが出来ないことに”将来的な見込みがない”と判断して、去っていくのです。
コラム:「NHKクローズアップ現代 『老いるマンション』 を考察する」
現実を直視することから始める
値上が必要? フローで確認、修繕積立金の値上げ
下のフローで管理組合の現状を確認し、対応策を確認してください
![修繕金積立が必要かどうかを確認するフロー](https://s-kanri.com/wp-content/uploads/2023/09/22875b89f5df85b1005da2fdb57c078b-1024x386.gif)
チェックポイント!
- 修繕積立金を値上げする必要がありますか?
- 次の大規模修繕工事または給排水管更新・エレベーター更新の予定はいつ頃ですか?
- ①②⑤⑥の組合は、同時に長期修繕計画書も見直し、長期にわたる支出削減を検討します。
- ③④は、積立金の値上げを直ちに行い、次に工事範囲を縮小し、各戸から徴収する不足額を算出します。この時、銀行からの借入(借金)をする④はお勧めしません。
!③④の場合、修繕積立金の値上げと大規模修繕工事費の圧縮は分けて考える必要があります
修繕積立金の値上げ問題から逃げると・・・
次回の大規模修繕工事が迫っている(出来ずにいる)組合ほど、早急に対応する必要があります。
値上げを行わないとハマる悪循環
値上を見送る → 不足額が積み上がる → 一層値上げが難しくなる →
→ 修繕が実施できない → マンションの価格が下がる → 売却が困難になる →
→ 空室が増える → 積立金の未払いが増える → 財政難に陥る →
→ 修繕が実施できない・・・
この悪循環にハマる前に、手を打たなければなりません。
問題から目を背け続けると、”住めない” ”売れない” ”借り手もいない” まさに「負動産」と化し、あなたの自由を奪うことになるでしょう。
結論、マンションの問題は「お金」の問題
必要な額を徴収し、不要な支出を減す!それは、所有者が自らが行うしかない。
修繕積立金の値上げ以外にも、”打てる手”はいくつもあります。
管理会社に丸投げすると、お金は底なしに掛かるでしょう。
所有者の団体である管理組合自らが取り組めるかどうかで、マンションの未来が変わります。
![](https://s-kanri.com/wp-content/uploads/2023/04/4e3323ef1cd227759af18263cffdbd42.gif)
初回ご相談は無料です
![](https://s-kanri.com/wp-content/uploads/2023/10/137d5a099c11ce3faadc630cfc371f79-724x1024.jpg)
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