全国マンション管理組合連合会から提出された申し入れ書が的確すぎて驚いた件

 2024年3月に、全国マンション管理組合連合会(全管連)から、国土交通省に対し、「管理組合の主体性と自立した管理及び修繕積立金を守るため「管理会社が管理者となる制度」を禁止する法律制定のお願い」が、提出されました。

※全国マンション管理組合連合会とは、全国のマンション管理団体が集結し、団体間の経験・情報などを交換し管理組合活動のレベル向上や行政への政策提言等を行う団体です。

 衝撃的なタイトルもさることながら、その申し入れ内容に共感したので、元マション管理会社のフロント経験を踏まえて、現状で「管理会社が管理者となること」の危険性をこの記事で共有したいと思います。

何が問題視されているのか

管理会社による管理者就任

 はじめに、この申し入れ書で法律の整備を求められているのは、「管理会社による管理組合の管理者(理事長に当たる)就任の禁止」です。

 マンションの管理者(理事長に当たる)を、管理組合員以外の第三者がから選任し、管理組合運営を行う方法は第三者管理方式と呼ばれますが、そのなかでも管理会社による管理者就任を問題視しているのです。

 第三者管理は、平成29年にガイドラインが制定された新しい管理方式ですが、導入当初の想定に反して、管理会社が管理者となり、理事会を設けず管理する方式が増加しています。

 管理者となった管理会社が修繕工事を自らのグループ会社に割高な価格で発注したり、「管理者」となった管理会社を解任する手順を現実的に不可能な方法にしてしまうなど、様々な問題が指摘されているのです。

国交省から出される「第三者管理に関するガイドライン」について

 このようななか国は、「第三者管理に関するガイドライン」を改定し、管理会社による管理者就任の時の”ガイドライン(決まり事の見本)”を発表しようとしています。

 その内容は、管理会社の管理者によるマンション運営に一定の「縛り」を設けるものですが、ガイドラインに強制力はなく、逆にガイドラインが発行されることにより”管理会社による管理者就任”にお墨付きを与えてしまうことが懸念されています。

管理組合連合会の指摘

 管理組合連合会が問題視しているのは、下記3点です。

  • 所有者のマンション管理に対する主体性を奪う
  • 大規模修繕工事の不透明な運営で修繕積立金が枯渇する
  • 必然的に管理組合と管理会社の利益が相反する

組合にとって理事会や管理者(理事長)の存在は最後の砦なのに

 わたしは、元管理会社のフロント(マンション担当者)という職にあったため、マンション所有者が自分たちの資産を管理するという意識がいかに薄く、”管理会社のいいなり”に管理を丸投げしているかを知っています。その上、理事会が廃止されれば管理会社は誰の”顔色”をうかがうことなく、自由に自社の利益を追求できる独壇場が完成してしまう・・・と大変危惧しています。

管理会社が管理者に就任した組合は「管理会社にとっての楽園」だ

管理会社が管理者に就きたい理由

 管理会社が管理者に就任したい理由は下記の2点が挙げられます

  • 各種管理会社業務の削減
  • さらなる利益の確保

 まず、理事会を廃止することで理事会に関する担当者の業務はなくなります。議案書の作成、配布、理事会出席、議事録作成、議事録配布など、これらすべての業務が削減できるほか、工事の発注や支払い業務も何の反対や苦言もなく右から左に行えます。

 管理者就任で業務が激減すれば、一人の担当者で抱える組合の数をさらに増やすことが出来、人件費が抑制が出来るのです。

 管理者就任費用を得ることでも収益を上げることが出来ます。

 さらに、さまざまな修繕や工事についての費用を自由に決定し発注できるため、管理会社は望み通りの利益を容易に上げることが出来るようになるでしょう。

管理者というかなめを放棄するとどうなるのか

 管理組合連合会が指摘するように、管理会社による管理者就任で、「所有者のマンション管理に対する主体性」が奪われ、「大規模修繕工事の不透明な運営で修繕積立金が枯渇」すれば、管理組合の財政は破綻し、管理会社は”お金が底を尽きた組合”の管理から手を引くでしょう。

 管理会社が撤退した後、主体性を奪われ運営能力のなくなった管理組合が投げ出されることになると懸念されています。

 ▶関連記事「マンションの修繕工事と談合」

組合は「いばらの道」を行くのか

 管理組合連合会の指摘によると、ある管理会社は、「管理者」となった管理会社の解任を困難にするための仕組みまで構築しているとあります。

 ひとたび管理会社による管理者就任を受け入れれば、後戻り困難な「片道切符」の旅となる可能性が高いのです。

マンションという住まい方の終焉が来るかもしれない

 このような状態に管理組合が陥っていることを世間が認識するに至るには、数十年を要するでしょう。

 数十年後には、立ち行かなくなったマンションがスラム化する状況に、人々はマンションを購入することを避けるという時代が来ているのかもしれません。

 管理会社は自己の利益追求により市場を荒廃させるような状態を放置し続けるのでしょうか。

 そして所有者である管理組合は、この危機を甘んじて受け入れるのでしょうか。

 管理組合連合会の申し入れ書はマンションを所有する人すべてにとって必読であると強く感じます。

▶管理組合連合会の申し入れ書(PDF)を読む


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