NHKクローズアップ現代「“老いるマンション” 維持費の高騰にどう備えるか」(2023年12月19日)を深掘りする

ー 国土交通省も警告!修繕コンサルタントと談合問題 ー

 2023年12月19日放送の「NHKクローズアップ現代」で、マンションの修繕工事にからむコンサルタントと工事会社の談合問題が報道されました。

 この問題は、マンション管理を取り巻く深い闇の一つです。

 この記事では、NHKで報道されたマンション修繕の談合問題について深掘りし、管理組合がとるべき対策をご説明します。

  ※管理会社が行う第三者管理については別記事を作成予定です

国土交通省からの注意喚起

 マンション修繕に掛かるコンサルタントと工事会社の談合問題に関しては、国土交通省が2017年に警鐘を鳴らしています。

 各種マンション管理団体に国土交通省から通知された内容から、国交省が認識する談合に関する問題を参照してみましょう。

「設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について(通知)」

 マンションの大規模修繕工事等において、診断、設計、工事監理等を担う設計コンサルタントが技術資料を作成し、管理組合の意思決定をサポートする、いわゆる「設計監理方式」は、適切な情報を基に透明な形で施工会社の選定を進めていくためにも有効であるとされています。
しかしながら、別紙1の通り、発注者たる管理組合の利益と相反する立場に立つ設計コンサルタントの存在が指摘されています

国 土 交 通 省 住 宅 局 「設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について(通知)」 平成 29 年1月 27 日

 このように、国交省が、「発注者である管理組合の利益と相反する立場に立つ設計コンサルタント」が存在している、と指摘しています。

さらに、そのコンサルの談合スキームを下記のように通知しました。

<指摘されている事例>

 設計会社が、施工会社の候補5社のうち特定の1社の見積金額が低くなるよう、同社にだけ少ない数量の工事内容を伝え、当該1社が施工会社として内定したが、契約前に当該事実が発覚したため、管理組合が同設計会社に説明を求めると、当該設計会社は業務の辞退を申し出た。このため、別の設計事務所と契約し直したところ、辞退した設計会社の作成していた工事項目や仕様書に多数の問題点が発覚し、全ての書類を作り直すこととなった。

国 土 交 通 省 住 宅 局 「設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について(通知)」 別紙1

<指摘されている事例>

 一部のコンサルタントが、自社にバックマージンを支払う施工会社が受注できるように不適切な工作を行い、割高な工事費や、過剰な工事項目・仕様の設定等に基づく発注等を誘導するため、格安のコンサルタント料金で受託し、結果として、管理組合に経済的な損失を及ぼす事態が発生している。

国 土 交 通 省 住 宅 局 「設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について(通知)」

 このように、2017年時点ですでにコンサルタントの談合問題が国土交通省で問題視されており、相談窓口が設置されています。

<相談窓口>
○(公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター
https://www.chord.or.jp/reform/consult.html
(電話番号)住まいるダイヤル …0570(016)100
○(公財)マンション管理センター
http://www.mankan.or.jp/06_consult/tel.html
(電話番号)建物・設備の維持管理のご相談 …03(3222)1519

修繕コンサルタントの外形

 修繕コンサルタントは様々な”姿”を取ります。わたしが経験したり見聞きする主なコンサルタントの外形は下記のようなものです。

 ・一級建築士(建築士事務所)

 ・マンション管理士

 ・マンション管理会社

 ・管理組合の理事

 中には、「大規模修繕工事を特定工事業者に誘導する会社」の社員や経営者が、区分所有者の外形を取り管理組合の中で暗躍していることもありました。

利益相反するコンサルタントの手法

利益相反が多発するコンサルタントの手法は次のようなものが挙げられます。

  • キックバックを見越してコンサルタント料金を格安で受注する
  • 管理組合や理事がコンサルタントを連れてきて契約を結びキックバックを受ける
  • 修繕委員会に委員として参加し特定業者へ発注を誘導しキックバックを受ける
  • 管理会社がコンサル業務を請け負いキックバックを受ける

 いずれの場合も、この特徴に該当するからと言って悪質コンサルタントであるとは限りません。

 誠実にコンサル業務を行うコンサルタントも存在します。

その区別が困難な点が「悪質コンサルタント」問題の悩ましいところです。

 談合を主導するのは、修繕コンサルだけでなく、管理会社の場合もありますし、特定の工事会社に工事を誘導しキックバックを受けることを「生業」とする区分所有者の場合もあります。

落とし穴だらけの管理組合運営

 管理会社に修繕を丸投げせず、設計監理コンサルタントを導入することは良いことですが、”善意”であろうと業務委託した先が施工会社と談合し工事費用を吊り上げたり、手抜き工事を黙認するなどという事案が相当な数で発生していると推測しています。

 ご相談を下さった管理組合の中には某大手設計会社を名乗る建築士にコンサルを委託した結果、多額の工事費を積算され建築士への疑念が生じ解約に至ったという話をお聞きしました。この建築士の積算の半額で修繕工事が実現したとのことです。

 一方で管理会社に大規模修繕工事を丸投げしていたが、理事長が他の工事会社から見積もりを取得し、工事を実施した結果、1000万円を超える(費用の1/3に相当)費用が抑制されたという組合もあります。

 はたまた、工事会社選定の直前に区分所有者になった方が、修繕委員会に乗り込んで工事を某社に誘導する働きかけをした話もあります。

それなら、誰を頼ればいいの?

頼れるのは、管理組合自身のチェック機能よ

自衛のために、勉強しなきゃね

初回ご相談は無料です。無料ご相談へのお問い合わせは下のボタンから

なぜ管理会社は修繕で多額の利益を得ようとするのか

なぜ、管理会社は大規模修繕で大きく儲けようとするの?管理組合は管理会に業務委託費を毎月払っているでしょう?

 多くの所有者の方が上記のような疑問を抱いています。

 この答えは、日常の委託費では「儲からないから」です。

 管理会社は、競合する中で日常の管理を安価で請け負います。

みなさん、できるだけ安いところにお願いしたいですよね?

 日常の管理では出ない利益を修繕工事の際に取り戻そうとするのです。

安く管理しているように見えても、実はそうじゃないんだね

 この、“日常管理を安く請負い、修繕工事で儲ける”という「管理会社商法」をやめると、日常管理の委託費用は相当な値上げになると考えられます。

 みなさん、どちらを選択するでしょうか。

 もちろん、日常の管理委託費からも十分な利益を得た上で修繕でも相当な額を儲ける管理会社もあります。一方、日常の管理委託費で十分な利益が出るので工事は積極的には関わらないという管理会社もあるとききます。

 重要なことは、この事実を知っておくということです。

管理組合がとるべき対策

 まずは、NHKの報道内容や国交省の注意喚起にあるような事態が多発しているという事実を多くの組合員(所有者)で共有しましょう。

 そして、国交省が通知する「問い合わせ窓口」などを利用して、契約しよとしているコンサルが訴えを起こされるなどしていないか、積極的に調べる必要があります。

 また、どのような手口で手抜き工事が行われるのか、どのような見積もり項目が怪しいのか、信頼できる専門家から学ぶことも大切です。

 全国には、管理組合の連合会が存在し、管理組合同士で様々な情報をストックしています。これらの連合会に加盟し情報を得ることも検討の価値があります。

ちいさな管理 の取り組み

 ちいさな管理の代表であるわたしも、マンション管理士であり、マンション管理コンサルタントを名乗っています。また、大規模修繕工事に掛かるコンサルタント業務を請けています。

 ここで、わたしたち“ちいさな管理”がお客様から「利益相反」の疑念を持たれないために行っている取組をご紹介します。

 みなさんも委託契約を考えているコンサルタントに対して取組をされることをお勧めします。

  • コンサル契約時の覚書締結(他の会社からの利益供与を受けない旨の覚書)
  • 施工会社合い見積り取得時に、コンサルタントは利益供与を受けない旨を宣言
  • 施工会社、コンサルタント、管理組合の三者で利益相反禁止の覚書を交わす
  • 管理組合で勉強会を開催し手抜き工事の手法やそのチェック方法を学び管理組合自らチェック機能を働かせる

 ここでもやはり、利益相反を防ぐための最も有効な方法は、管理組合が工事会社とコンサルに対するチェック機能を働かせることです。

 契約書や覚書があっても、裏で利益供与が行われていれば見破ることは困難だからです。

 しかし、知識武装しチェック機能を働かせることが出来る組合には、悪質なコンサルタントは入り込むことを躊躇するでしょう。

なるほど! 狙いはそこか!

現在進行中のサポート一例

現在、ちいさな管理でサポートしている管理組合運営サポートの一例をご紹介します

 1,一級建築士による建物の簡易診断

 大規模修繕工事時期がすでに到来しているのであれば、高額な「建物劣化診断」は実施せず、一級建築士による簡易診断で費用を抑えることが出来ます。

 記事:「建物の劣化状況を診断する」をご参照ください

 2,大規模修繕工事のための概算工事費の取得(一級建築士対応)

 大規模修繕工事には相見積もり取得が必須です。公平な相見積もりの取得ができるように概算工事費を作成します。

 3,大規模修繕工事実施に向けた修繕積立金シミュレーション作成

 修繕積立金は単に値上げすればよいというものではありません。2倍、3倍と大きく値上するのではなく、複数のシミュレーションを基に値上げ幅を慎重に検討し、今後取るべき費用削減策の検討も同時に行います。

 4,修繕積立金改定の実施・・・

 5,長期修繕計画書の作成・・・

マンション管理士、マンション会計のエキスパート、一級建築士がチームで、必要に応じたサポートを致します。

ちいさな管理

大規模修繕工事をサポートします。詳しくは下記ページをご覧ください


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