まさかの機械式駐車場再建築!! 一方、築12年で使用停止も!
築12年で使用中止!
最近、非常に興味深い話を聞いた。築12年のマンションで機械式駐車場を使用終了、つまり通電を止めて運用を停止するというのだ。
このマンションの機械式駐車場は昇降横行式と呼ばれるもので、パレットが水平と垂直に動き、車を出し入れするタイプのものだ。都心部で広く採用されている。
駐車場の利用契約が満車に近い場合は、使用者から毎月支払われる使用料が組合会計の収入となり、マンションの財政に寄与する。しかし、利用率が下がると管理組合の収入が減るだけでなく、電気系統の修理、部品交換、錆止め塗装等維持費に出費がかさみ、管理組合の会計を圧迫する要因になる。
一般的に都心部マンションにおける駐車場使用率は、経年で漸減する。マンションと共に居住者も年を重ね、車を手放す人が増えるからというのが定説だ。これが正しければ、機械式駐車場はマンションにとって早晩、負の資産になると言えるだろう。
都心では、早々に撤去されることも
以前、かなり利便性の高い地域で築20年を待たずに機械式駐車場を撤去したという話を耳にしたことがある。しかし、築12年で使用中止とは正直驚いた。
「築12年で使用中止するとは、ずいぶん決断が速いですね」と感想を述べたところ、
所有者は「撤去する費用が高額なので、固定して使うんだけどそれに維持費がかかるというんだ。馬鹿げている」と教えてくれた。
何と、完全に解体しなければ、安全のために経費が掛かり続けるのだ。その一方で、解体・撤去には相当な費用が掛かるため、時期を見計らうらしい。
マンションの金食い虫に変身する?!
このように機械式駐車場はリスクの高い設備と言えるが、某社社長の居住するマンションでは築30年で撤去・新設してしまった。それも、新設費用は修繕積立金で賄わず、15年のリース契約だという。
大野:「それは悪手ですよ。リースアップした15年以降から部品交換時期が来ますから、リース後莫大な費用が掛かるんです。」
某社社長:「マンションの所有者で駐車場を利用している人は半分以下しかいない。それないのに新しい機械式駐車場にしてリース料を払い続けるなんておかしい。わたしは臨時総会で強硬に反対したが、何年も前から綿密に計画されていたようで止めようがなかった。それに車を持っていない人は皆、駐車場のことに無関心なんだ。」
大手管理会社で管理組合の会計に長年携わってきた友人も、「機械式駐車場を解体する組合は多くあれど、再建築(それもリースで)したマンションは見たことがない。」と呆れていた。
管理組合の財政が「詰む」のは案外早い
中には駐車区画を無くすとマンションの資産価値が下がるなどと主張する人もいるが、現実には若者の車離れが指摘されて久しく、増加する高齢者は車を手放さざるを得ない。
件の築12年のマンション所有者も、機械式駐車場利用停止の理由について「単に利用者が減り採算が合わなくなったから。」と言っていた。時代は変わったのだ。
あなたのマンションは「負の資産」と化した機械式駐車場を維持し続けていないだろうか。
そして、管理組合は問題を先送りする体質になっていないだろうか。
あとがき
この記事にある、築12年で機械式駐車場の使用中止を決定した管理組合の話を聞いた時、理事会に相当コスト意識の高い理事がおられたのではないかと推測した。
共用物の変更は管理組合にとってハードルが高い。
利用者はなんとか今まで通り維持することを希望するが、使用しない組合員は自分達のお金が使いもしない施設にジャンジャン使われることを問題視するため、両者の利害関係の調整が難しくなる。
築12年で使用中止したマンションはこの問題を上手くクリアーしたようだ。
一方リースで再建築してしまったマンションは、使用していない組合員(区分所有者)らが再建築無関心で、使用者が主導して議論が進められてしまった。
無関心の要因の最たるものは、「リース」で再建築したことだ。
リースは一件費用が抑制されるように見えるのだ。修繕積立金の値上げも行われなかった。
しかし、15年間のリース料支払は機械式駐車場の使用料収入を上回ったり、少なくともこれまで管理組合の収入となっていた利用用が根こそぎリース料に消えてしまう。
その上、リースアップした16年以降は電気系統や駆動部の部品取替えなど毎年莫大な修繕費の支出に追われる可能性が極めて高い。
リースにするということは、財政に余裕がないということであり、余裕がないなら使用停止、撤去を行うことをまずは考えるべきだろう。(リースは最もコストパフォーマンスの悪い手法だ)
果たして16年後にも車を所有し駐車場を利用したいという所有者がどの程度いるのか、大いに疑問だ。
機械式駐車場はおよそ30年ほど前から設置が爆増しており、この「金食い虫」をどのように取り扱うか、決断を迫られている管理組合は相当数に上ると推測される。
時代は変わったということを念頭に、話し合うことをお勧めする。
参考記事
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