マンション設備に関する支出削減 ④
ここまで、マンションが所有する「設備」にかかる費用削減について説明してきました。
今回の記事では、マンション独自で所有する「施設」に関して経費削減策を提案します。
マンションが所有する「施設」とは、共用で使用するキッズルーム、ゲストルーム、ゲスト用ラウンジ、温泉などです。
これら施設に要する費用とその施設廃止まで検討方法を解説します。
なお、設備を取り換えるまたは大規模な修繕を実施するなどの場合には、修繕積立金から支出されます。
費用削減検討項目リスト<管理費会計/設備編>
1、住戸内のガス漏れ警報器一斉取り換え | 各住戸内のガス警報器を管理組合の費用で全戸一斉交換している組合 |
2、機械式駐車場の平面化 | 機械式駐車場の稼働率が70%以下の組合 |
3、リモコンを要するゲートの見直し | リモコンを必要とする機械式ゲート(主に駐車場ゲート)を設置している組合 |
4、館内照明(電球)のLED化 | 共用部照明がLED化されていない組合 |
5、防犯カメラ運用の見直し | 防犯カメラが設置されている組合 |
6、その他維持にお金がかかる施設の廃止 | フィットネススタジオ、入浴施設、その他維持管理に費用が掛かる施設を持つ組合 |
その他 維持にお金がかかる施設の廃止
施設はないほうがいいと考える理由
新築のマンションを購入する際に、共用ラウンジやフィットネスルームなど、まるでホテルのようなピカピカの施設を見て購入を決めた方もいるでしょう。
しかし購入の際に、その共用施設も経年しマンションのお荷物になる可能性を考える方はどれほどいるでしょうか。
建設会社は、将来的に維持管理に経費がかさむ施設であっても、”売れそう”であれば、マンションに設置します。分譲時に売り切れればいいのです。
やがて、マンションは所有者と共に高齢化し、「財政危機」を迎えます。
マンションの”売り”であった施設も古びてみすぼらしくなり、利用者も減り、ただでさえ財政難のところに日常の管理と修繕に支出が止まらない ”やっかいな金食い虫” になります。
当然、管理組合では、”やっかいな金食い虫” を閉鎖や撤去しようという議論になるでしょう。
しかし、その施設に価値や愛着を感じている所有者との間に廃止と継続をめぐりモメ事が生じます。
この一連の流れは、”マンションあるある”の一つです。
このためわたしは、分譲マンションには「共用施設は少ないほうがよい」と主張しています。
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施設見直しのチェック項目
管理組合の財政を圧迫する施設に対して、確認する事項は下記3点です。
- 施設利用者と施設利用料収入の増減
- 現在の施設維持費の増減と、将来的な維持費
- 居住者が利用している割合(偏った利用者のみで使用していないか)
その施設があることで、マンションの付加価値が上がるという議論がありますが、「付加価値」はその基準が明確でないため、議論すべきではないでしょう。
マンションの居住者の多くが「有効利用しているかどうか」を議論します。
有効活用できていれば、少々の赤字であっても施設存続を選ぶ価値はありますが、その際には常に費用対効果をチェックし続ける必要があります。
施設存廃検討の流れ
利用者の推移を明らかにする
過去3~5年間程度の、施設利用者数をグラフ化し、その増減を確認します。
経費の算出
過去3~5年間、施設に要した費用(人件費、清掃費、電気代、定期点検、塗装、修繕等)を洗い出します。併せて、今後10年で予想される日常管理以外の費用(設備の取り替え、大規模な改修、内装工事など)を算出します。
費用対効果の確認
施設の収入と支出および将来の改修費に関する比較表を作成し、収支バランスと将来的な利用の見込み表を作り、理事会で議論します。議論開始の初期に、○年の継続審議とするというように期限を設けておくことを推奨します。
居住者アンケートの実施
理事会での協議と並行して、所有者への意識調査を実施します。アンケートには、比較表と将来予測を添付し、「お金の掛かり方」を開示します。また、現在の管理組合財政についての状態も説明します。
継続して審議を続ける
アンケート結果を踏まえて、3~5期ほどの理事会で継続的に施設存廃に関する議論を継続し、毎年定期総会で議論の中身を報告します。これは、出来るだけたくさんの所有者に施設存廃の議論に参加してもらうためです。
なお、この存廃議論の中では、施設修繕等に高額な費用を支出することを避ける必要があります。このためにも、早い段階からの存廃の議論を開始することが重要です。
総会で決議するまたは議論の内容を報告する
存廃の議論に結論が出て、理事会で廃止が可決された場合には総会で所有者からの承認を得ます。一方、来期理事会でも継続審議する場合には、今期理事会での議論の内容を総会で報告し、来期理事会での継続審議事項に指定します。
また、継続して施設を運用すると結論を出した場合にも、利用料改定を含む改革を行い総会で承認を得ることも必要です。
このステップは、機械式駐車場の存廃議論にも応用できます
施設の廃止は特別議案
今ある施設を廃止や撤去することは特別議案(総会で3/4以上の賛成)に該当することが多く、慎重に行うことが必要です。しかし、議論を避けたり、現状分析を怠ると、マンション会計の赤字化を招く恐れがあります。
長期間でみんなで決める と決意すれば理事長の荷も軽くなります。
施設の存廃は短期間で決めずに、期間を定めた継続審議にすることで、リスクを減らします
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