銀行の業務効率化を妨げる管理組合の特性
とあるメガバンクの悩み
組合口座が銀行の業務効率化を妨げる重大要因の一つとなっていることを、皆さんはご存じだろうか。
Aさん:「管理会社〇●の持つ管理組合の口座が、〇×銀行の経営課題に挙がっているのはご存じですか?」
大野:「え?何の話ですか?」
Aさん:「〇×銀行は管理会社に管理組合口座すべてを引き上げてほしいと言っているようですよ。支店の窓口業務の縮小を阻んでいるんです。」
これは、某都市銀行関連のとある方との会話の一部だ。
国土交通省のデータによると現在、分譲マンションの総ストック数は700万戸に迫っている。
マンション1棟当たりの平均戸数が50戸とすると、14万棟ほどマンションがあり、日本には十数万のマンション管理組合が存在することになる。
分譲マンションの所有者は、共益費に当たる管理費と修繕積立金が毎月管理組合の指定口座に引き落され、それぞれ分別管理が求められている。このためほとんどの組合は、管理費口座と修繕積立金口座の2口座を持っている。複数の銀行に複数の口座を持つ組合も珍しくない。
しかるに、日本の銀行には数十万という管理組合口座があることになる。
銀行泣かせの管理組合会計の仕組み
なぜ、これほど銀行が管理組合口座を手放したがっているのか、それは管理組合の特性に要因がある。
例えば、小修繕などが発生すると、管理会社は都度引き出し伝票と振込伝票を発行し、理事長に組合印を押してもらい、月に2~3回ほどまとめて各銀行に持ち込んで処理する。現金で徴収する費用がある場合はその逆で入金伝票を作成し窓口で一件一件入金処理する。
入出金や振り込みが、1ヶ月に数十件以上に上る組合もある。
このように、数百組合分の「引き出し」、「支払い」、「振込・振替伝票」を管理会社から銀行に持ってくるので、銀行はそれを処理する必要がある。莫大な量だ。
また、管理組合の口座名義人は理事長名であるため、理事長が毎年変る度に全口座の名義を変更する必要があり、この名義変更も銀行の「悩みの種」となっている。
ネットバンキング採用は不可避!
銀行からは「また、あいつらが来た!」と、迷惑極まりない行為のような目で見られるのだ。
窓口業務を削減して業務効率化を図らなければならいことは銀行の至上命題である。一向に効率化しない組合会計業務が銀行の足を引っ張っていることを銀行は想像以上に重く見ているのだ。
実は、管理組合口座用に理事長がスマホ上で支払いの決済ができるサービスをすでに銀行は備えている。
しかし、これを利用しない管理組合が非常に多い。
理事長は1年間だけの職務であることが多いため、慣れないWEB決済を引き受けるより、管理会社が作成する引き出し伝票や振込伝票に記名・捺印することを選択しがちだ。
だが、銀行業務の効率化は待ったなしだ。管理会社も組合会計をネットバンキング型に一斉変更するほかない時が迫っている。
アナログを脱出できない組合は、振込どころか管理を「お断り」される可能性がある。
政治家同様、管理組合にもデジタルでの透明化が迫られているのだ。
あとがき
銀行は、窓口業務の削減に必死だ。とある都市銀行は、一向にウェブバンキング化が進まない管理組合の口座に相当業を煮やしていたようだ。その話を聞いてから4年近くたつが、窓口を利用する状態は相変わらずのようだ。
かく言うわたしも、ネットバンキングの使用は避けたい派だ。理事長になったら印鑑を使用したいと思うだろう。
もしかすると最後まで残る窓口業務は管理組合のものかもしれない。
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