2022年10月18日の NHKクローズアップ現代「老いるマンション~老朽化と高齢化にどう備えるか~」をご覧になられただろうか。
「老いるマンション」問題は、マンション管理業界ではすでに大きな問題ととらえられて久しい。
昨今は、大手新聞社が定期的に取り上げているし、週刊誌でも特集記事が組まれているが、天下のNHKクローズアップ現代だけに、非常に興味があった。
そこで、番組の報道対するわたしの感想を書いてみた。
2023年11月放送のNHKクローズアップ現代に関しては↑こちら
マンションの問題は「お金の問題」である
マンションが老朽化で困窮するたった一つの要因は、管理組合の財政破綻だ。
マンションは老朽化しても、お金さえあれば問題の解決はたやすい。
お金があれば質の良い修繕を施すことが出来、長期間快適に使用できる。しかし80年住み続けられるのは、莫大な費用を投入して維持管理できるマンションだけの話だ。
番組で取り上げられたマンションは、建設当初、管理組合がなかったということからも、修繕積立金を積み上げることが出来ず、現在の月額3000円と言う修繕積立金は、相場の1/3以下だ。
外観を見る限り、45年間一度も大規模修繕工事を実施したことがないと推測されるが、築古マンションの中には、積立金を値上げできないまま放置しているマンションが少なくない。
どのようなマンションが破綻しやすいのか
クローズアップ現代では、どのようなマンションが破綻しやすいのかを示していなかったが、破綻しやすいマンションには実は共通点があると考えている。それは、
- 地方のマンション、②小規模なマンション、③築40年以上のマンション だ。
地方とは、首都圏でも交通の便が悪い地域なども含まれ、小さければ小さいほど財政は悪化しやすい。
資産価値が高ければ投資家が買い取って賃貸に出す。
借り手が付きやすい状態にマンションを保つために管理費や修繕積立金の値上げにも賛成しやすいが、売れない、借り手もない、その上所有者は収入も少ないでは値上げの余地はなくなる。
要するに、不動産市場で流通できなくなった物件が破綻する傾向にある。
マンション総ストックに対する築40年超の割合
国土交通省集計によると、2021年現在の築40年以上のマンション数は115万戸、総ストックの約17%を占め、10年後の2031年には2.2倍の249万戸、20年後には3.7倍の425万戸となると予想している。
2031年のマンション総ストック数を780万戸と仮定すると、2030年頃には分譲マンションの30%以上が築40年超となると推計される。2040年頃には、45%近くまで上昇すると考えられる。
同意形成の難しさがマンションの問題解決を困難にしている
マンションを巡る問題の解決をより難しくしているのは、所有者が多数あり、各自経済状況が異なり、同意形成が困難であることだ。
番組で、12年後に解体をすると決めてマンションの「終活」に取り組んでいる組合を紹介したが、取り壊し費用が12年後に倍増していたら、各自がさらに持ち出して取り壊すことになるが、それが可能か、非常に危うく未知数だ。
しかしながら、マンションの終活は非常に重要で、これが進まなければ、日本に廃墟マンションがあふれることになる。
これは、木造の戸建てが廃墟になることとは全くスケールが違う話なのだ。
マンションの破綻を防ぐために
新規マンション建設を規制する
最後に、番組でマンション破綻を防ぐ根本的な解決策に触れていなかったことは本当に残念だ。
もちろん、解決策を示すことは困難だが、少なくとも、
新たなマンションを造らせず、今あるマンションを有効活用する方向に舵を切るべきだと、なぜ指摘しないのか。
新規のマンション建設を規制すれば、既存マンションは流通しやすくなる。そうすれば、お金を出し合って持続可能なマンション運営を行うことに価値が生まれるはずだ。
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