嵐を呼んだ、修繕積立金の値上げ

修繕積立金とは

分譲マンションでは、共用部の大規模な修繕に多額の費用がかかる。例えば大規模修繕工事の場合、戸数や内容にもよるが1戸当たり100万円程度の支出となる。

高額な修繕費は、一度に多額の費用を徴収されることのないよう毎月一定額を各所有者が出し合って長期的に積み立てられる。これを修繕積立金という。

この積立金の全国平均額はおよそ月額1万円前後と結構な額だ。(日常管理に必要な「管理費」は別途徴収される)そして、数年ごとに積立金額の見直しを行い、段階的に値上げされるというのがミソだ。

理事会からすでに紛糾

新人マンション担当者時代の話だ。

修繕積立金の値上げ時期を迎えた某管理組合で、現状金額では積立金が不足するため値上げが必要という試算が会社から示された。私は担当者としてさっそく値上げを理事会に提案した。

ところが、提案直後から「値上なんか必要あるの?」という意見が理事の口からもれた。

それもそのはず、デベロッパーは、新築マンション販売時に「修繕積立金は将来的に値上げされます。」なんていう説明はしない。そんな余計なことを公言すれば、マンション販売に水を差すからだ。このため、修繕積立金が段階的に値上げされるという認識を多くの所有者側は持っていない。

また、値上げの根拠となる長期修繕計画書等は、マンション管理会社から一方的に示されるもので、所有者からすると検証のしようもない。値上げについて、にわかには納得しがたいというのが、率直な反応であろう。

理事会は、値上げは仕方がないという意見と、値上げは必要ないという意見でしばし紛糾したが、最終的に、段階的増額プランを臨時総会で決議しようという方針に落ち着いた。

大荒れ!修繕積立金値上の臨時総会

臨時総会当日は、台風の直撃で朝から大荒れの天気だった。

わたしの上司は重大なプライベート行事を抜け出して、臨時総会に立ち会ってくれるという。別の先輩も駆けつけてくれた。

開始早々、議案の説明も終わらないうちに、所有者の一人が、

「こんな値上げ案は採決するべきではない!」

「こんな修理、もっと安くできる!」と、30分にもおよぶ演説を始めてしまった。

別の出席者からは、

「購入時に値上げがあるなんて、聞いていない!販売者はわたしたちを騙したのか!?」という発言まで飛び出した。

経験不足で能天気な担当者が、たった1期の理事会検討で値上げ議案を上程したため、総会は不審の嵐で大荒れとなった。

同席した上司や先輩からも、「値上げのための総会」を甘く見ていたと、厳しく指摘され、担当者の心はずぶ濡れになった。

この体験で、「値上げ」に対する住民の拒否感がいかに強いかを私は実感した。

修繕積立金の値上はどう進める?

まず、段階的値上げは避けられないという認識を住民間で共有し、どのように値上げするか話し合い、実現までに数年を掛けるべきだったのだ。

それにしても、必要と考えていながら実現できず、「増税」ともらしただけで叩かれる財務省お役人の心情とは、こんな感じか? いや、国家公務員とマンション担当者では給料が全然違う。なんだか理不尽だ。

掲載:株式会社ビル新聞社

あとがき

 マンションの修繕積立金は、値上げを前提に設計されている。

 新築であれ、中古であれ修繕積立金の値上げは必ずあると考えて購入するべきだと思う。

マンションの規模が小さければ小さいだけ値上げのペースは速いかもしれない。

修繕積立金の値上げは遅れれば遅れるほど、値上げ幅は大きくなり所有者の同意を得ることが困難になる。

積上げ額が不足していると大規模修繕工事が実施できなくなり、問題解決がさらに難しくなる。

そうこうしている間に、マンションが高経年化し所有者も高齢者ばかりになってしまうのだ。

現在、国が区分所有法を改正し、修繕や建替え要件を緩和しようとしているが、問題ははるか手前で発生し膠着しているのだ。

要件緩和の恩恵を受けるマンションがどれほどあるというのだろうか。

新築マンションの総量規制以外にマンション問題解決の道はない。

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