モンスター放置は管理崩壊につながる

マンションのモンスターは都市伝説?

 マンションにはモンスターが生息しているという話は、単なる都市伝説ではない。

分譲マンションでは管理に関する重要な事柄は、選出された理事役員が理事会で内容をつめ、所有者が参加する総会で決議するのが一般的だ。

理事会での議論がマンションの将来を左右すると言え、理事達は無報酬でプライベートの時間を削らなければならない。

一般的に、理事会の役割は輪番制で否応なく回ってくる。

更に追い打ちをかけるのが、マンションに住まうモンスターの存在だ。というのも、この怪物の好物は、理事役員の心をくじくことだからだ。

 忘れもしない、かつて私が遭遇したのは、つがいのモンスターだった。

臨時総会、モンスターの独壇場に

 その日の臨時総会は大規模修繕工事の業者選定が議題だった。

管理会社の担当者と理事が早い目に会場へ集合し歓談する中、モンスターが現れ第一声を発した。

「今日の総会の机の並べ方はいつもと違う。私たちへの当てつけか?」

管理会社の担当者は、

「会場はいつも同じ部屋を借りられるわけではなく、机の並べ方も部屋ごとに異なるのですよ。」と説明した。

モンスターはさらに

「オレ達に対する嫌がらせじゃないの?いつものように並べろよ。」と理事を見回した。

この時、管理会社側の補助要員として参加していたわたしは、会場全体が恐怖で凍り付くのを目撃した。

開始時刻を迎えたものの、理事とつがいのモンスター以外の所有者は誰一人現れない。

それもそのはず、モンスターにより総会が毎度紛糾し、集会の体をなさないため、理事以外の組合員が参加することはなくなっていたのだ。

まず、理事長が第一議案について説明しようとしたところで、モンスターから待ったがかかった。

「私たちの申し入れが議案に反映されていない。」

「私たちの質問に理事会は答えていない。」と言うのである。

モンスター放置は死活問題

 モンスターは、理事会がまとめた議案書に対して「意見書」なるものを提出していたのだ。議案説明に先立つこの発言から、「議案を決議させないぞ。」という強い意思が感じられた。

実は、理事会が提案する議案に対しては、可決には必要な賛成票が事前に集まっていた。しかし、モンスターがぶちまける理事会批判に圧倒された理事らは審議に入れず、当然、決を採ることもできず臨時総会はお開きとなった。

 ほどなくして、管理会社はそのマンションの管理契約更新をお断りした。

その結果、マンション管理組合は、築十数年にも関わらず4度目の管理会社変更となり、原契約よりも数百万円以上高額の管理契約締結に追い込まれた。

4度目の管理会社変更ともなれば、マンションに「何かいる」ことは容易に想像がつく。管理会社が高額でしか受注しないのは当然のことであった。

 モンスターを放置すると、恐怖がマンションを支配する。すると、管理組合が機能しなくなり、深刻な被害を招くことになりかねない。

所有者はモンスターが狂暴化する前に対策を講じなければならない。

管理会社の逃げ足は速いが、所有者は逃げる訳にはいかないのだから。

掲載:株式会社ビル新聞社

あとがき

 「あの人がいるから」「あの人が出てくるから」総会には出ない。

そんな話をよく耳にする。

「あの人」とは、管理組合に巣くうモンスターだ。

総会で理事会や管理会社への不満や疑念を延々と演説する。

その声は大きく、聞くに堪えない暴言を発する。

総会は紛糾し、時に3時間以上に及ぶ。

モンスターは、人の時間などお構いなしだ。ただただ、自分の正当性を主張し対話にならない。

 しかし、そんなモンスターを放置しているのは管理組合自身だ。所有者の一人一人である。

 管理会社に「モンスターがいる」とレッテルを貼られたマンションの行く末は、たやすく予想できる。

管理会社の担当者は困惑するが、管理会社はなにも困らない。本当に手に負えないときはさっさと管理契約を終了するだけの話だ。

 管理組合がどう対応するか、所有者が逃げずに対峙しようと”腹をくくれるか”に、マンションの未来はかかっている。

 モンスターの存在が深刻影を落としている組合が、相当数あると推測している。

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