固定資産税の減税でマンションの改修工事は進むのか
マンション長寿命化促進税制はじまる
2023年4月に採択されたマンションの長寿命化を促進するための減税制度について、詳しく解説します。
制度の目的
昨今、適正な管理を行えていないマンションが増えています。
その要因として、マンションは所有者の同意形成を図ることが困難であること、高経年にともない管理組合の財政が悪化し必要な修繕が行えない状態に陥ることが挙げられます。
これらの理由により、マンションを適切に管理することが出来ていない管理組合に対し、この制度は長寿命化のための修繕を押し進める起爆剤として期待されています。
制度の概要
この制度は、築20年以上のマンションが過去に長寿命化工事(屋根、床の防水工事及び外壁塗装工事)を行った場合、一定の基準んをクリアーしていればマンションの部屋に掛かる固定資産税が減税される制度です。
制度を利用するための5つのハードルとは
この制度を利用できる管理組合は5つの前提条件をクリアーしている必要があります。
1、築20年以上でかつ10戸以上のマンションであること |
2、申請より前に管理計画の認定を取得していること |
3、令和3年9月時点で、管理計画認定基準以下の修繕積立金額であり、減税申請より前に基準以上の積立金に値上げを行うこと |
4、過去に長寿命化工事(屋根、床の防水工事及び外壁塗装工事)を1回以上行っていること |
5、事が2025年3月末までに完了していること |
まず、この制度を利用できるのは、築20年以上のマンションに限られます。
そして、次に管理組合の修繕積立金の金額が管理計画認定基準を下回っていたマンションであり、かつ減税を申請する前に基準以上に積立金額を値上げを行っている必要があります。
管理計画の認定とは
「マンション管理計画認定制度」とは、マンションの管理組合が自らのマンションの管理計画を、(推進計画を作成した)都道府県等の長に提出し、一定の基準を満たす場合、都道府県知事等による認定を受けることが出来るという制度です。
※詳しくはこちらをご参照ください。
多くのマンションを抱える地域で“管理不全マンション”の増加は、周辺地域の良好な住環境を脅かすことからも、それぞれのマンションで適正な管理ができているかどうかを自治体が判断し、必要があれば助言や指導または勧告などを行うというものです。
優遇税制の利用には、マンションの「管理計画」を所在する自治体から”認定”されている必要があります。
この認定は、特に高経年化したマンションにとってハードルが高く、認定を受けるための申請を見送る管理組合もあります。
修繕積立金の管理計画認定基準とは
「管理計画認定制度」には、認定を受けるための修繕積立金の基準額が明記されており、この優遇税制を利用するには、この金額を上回る額まで修繕積立金を値上げする必要があります。
修繕積立金認定の基準額
/ | 地上階/建築延床面積 | 月額の専有面積当たりの修繕積立金額 |
20 | 5,000㎡未満 | 235円/㎡・月以上 |
階 | 5,000㎡以上10,000㎡未満 | 170円/㎡・月以上 |
未 | 10,000㎡以上20,000㎡未満 | 200円/㎡・月以上 |
満 | 20,000㎡以上 | 190円/㎡・月以上 |
/ | 20階以上 | 240円/㎡・月以上 |
例えば、20階以下で延べ床面積が5,000~10,000㎡未満のマンションなら、70㎡の住戸で11,900円/月以上の修繕積立金となります。(機械式駐車場なしの場合)
機械式駐車場を保有するマンションはさらに別途金額が加算されます。
※詳しくはこちらの記事をご参照ください。
- 機械式駐車場がある場合には、修繕積立金の平均額の目安に、機種や設置台数に応じて、1台当たりの月額修繕工事費から算出される単価を加算する必要がある
- 加算額の算出:機械式駐車場がある場合の加算額(円)=機械式駐車場1パレット当たりの修繕工事(円/台・月)※下記表を参照 ×機械式駐車場の台数 ÷ マンションの総専有面積
機械式機駐車場タイプ別 1パレット当たりの修繕費用(月額)早見表
機械式駐車場の機種 | 機械式駐車場の修繕工事(1台/月額) |
---|---|
2段(ピット1段)昇降式 | 6,450円/台・月 |
3段(ピット2段)昇降式 | 5,840円/台・月 |
3段(ピット1段)昇降横行式 | 7,210円/台・月 |
4段(ピット2段)昇降横行式 | 6,235円/台・月 |
エレベーター方式(垂直循環方式) | 4,645円/台・月 |
その他 | 5,235円/台・月 |
ちなみに、令和3年9月時点で修繕積立がこの基準以上であった組合は、そもそも減税制度を利用できません。
厳しい条件に見合う減税内容なのか
このように減税制度を利用するには、
①一定基準の長寿命化工事を実施し、
②修繕積立金を認定額以上に値上げし、
③「管理計画認定制度」で「認定」される必要があります。
これらのハードルをクリアして得る減税額が、マンションの固定資産税(住戸に掛かる部分のみ)の20~30%が1年間減税されるという制度です。
この制度を理由にして、修繕積立金を値上したり、管理計画の認定を受けたりする動機付けになるのか、いささか疑問です。
しかし、個人の資産であるマンションの共用部を修繕することで個人に掛かる税金を減額する制度は今回が初めてと思われます。
該当する組合は検討の価値はあるかもしれません。

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