長期修繕計画書作成の目的
長期修繕計画書の作成および見直しの目的の一つは、修繕積立金額のただしい設定にあります。
長期修繕計画書が「ない」組合は、まず作成し、「ある」組合は内容を精査し修繕積立金が足りるのか足りないのか、現実と向き合うことが重要です。
この記事では、長期修繕計画書が「ない」場合の作成方法と、「ある」場合の見直し方法を具体的に解説します。
長期修繕計画書作成、誰が主導するのか
長期修繕計画書を作成するまたは見直す際には、理事会だけで行わず、「長期修繕計画書検討委員会」を設置することをお勧めします。
理由は、理事会は輪番で理事が回ってくる場合が多く、その時の理事が積極的な活動が難しい場合、長期修繕計画書に関して先送りにされる可能性があるからです。
また、検討委員会で作成(見直し)を推進し、理事会の承認を経て総会に上程すれば、より多くの所有者が作成過程に参加でき、管理組合活動への関心が高まります。
長期修繕計画書を管理会社が無償作成するなら、まずはそれを活用する
管理組合に長期修繕計画書が 「ある」場合
現在、管理会社や設計事務所が作成した長期修繕計画書がある場合は、それを利用して内容を見直します。
管理組合に長期修繕計画書が 「ない」場合
管理組合に長期修繕計画書がない場合、管理会社との管理委託契約で長期修繕計画書を作成するとなっている場合(費用が管理委託費に含まれている場合)、管理会社に作成を指示します。
管理会社による作成が有償である場合、設計事務所や建築士、マンション管理士などから作成費用の見積もりを取得し、管理会社に掛かる費用とを比較し依頼先を決定します。
見積取得の際には、国土交通省の「長期修繕計画書標準書式」を採用した計画書作成の費用の見積もりを取得しましょう。
長期修繕計画書の作り方
長期修繕計画書作成フロー
- 長期修繕計画書(作成)検討委員会を設置する
- 理事会の下部組織として設置します。出来る限り総会で設置に関する承認を得て、委員を募集します。外部の専門家を入れることもできます。
- ①計画書作成を依頼する
- 管理会社、設計会社(設計士)、マンション管理NPOなど(マンション管理士)、建設会社(修繕専門) などへ依頼
- ②比較するための計画書や別の専門家の意見書(セカンドオピニオン)を活用する
- 管理会社、設計会社(設計士)、マンション管理NPOなど(マンション管理士)、建設会社(修繕専門)、マンション管理センター などへ依頼
- ③計画書を比較検討する
- 工事時期、工事額、工事単価 など 大きな違いがある箇所を精査し、必要があれば①で作った計画書を修正する
- ④マンションの財政状況に応じて除外する工事などを検討する
- 機械式駐車場の建替え、サッシの一斉交換 他
- ⑤総会で計画書について承認を得る
- 通常総会・臨時総会どちらでも可能
- ⑥計画書の内容を見直す
- 常に(毎年でも)計画書を現状に合わせるために修正を続けます
第三者作成の計画書や意見書(セカンドオピニオン)を活用する
別の専門家に概略の長期修繕計画書作成を依頼したり、今ある計画書に対して意見書作成を依頼するなどし比較材料を取得します。それらを活用し比較検討を行うことで、より精度の高い長期修繕計画書にすることが出来ます。
また、公益財団法人マンション管理センターの「長期修繕計画作成・修繕積立金算出サービス」の活用も考えられます。
修繕予定時期や設定金額、工事内容等に大きな違いがある場合には、その理由を確認し、必要があれば長期修繕計画書の修正を指示します。
長期修繕計画から除外できる項目はあるか
長期修繕計画書の中には下記のような工事が計画されている場合が多く、これらを実施するかしないかを決めることによって、全体の予定工事費累計が大きく変わります。
資金に余裕がない組合は、これらの工事は行わないと総会で決議し、長期修繕計画書から省くことも検討しましょう。
- 玄関扉の一斉交換
- サッシ一斉交換
- 機械式駐車場の撤去・再建築
- エントランス等のリニューアル 他
特に、機械式駐車場の建替えは非常に高額です。
建替えず「撤去及び駐車場平面化」に変更すると、支出が大幅に減らせる可能性があります。※機械式駐車場利用料が減りますので注意が必要です。
これは、“機械式駐車需をいつまで維持するのか”を考えるための別の検討会が必要です。
この問題にも早期に取り組みましょう。
※機械式駐車場の平面化方法は下記のページをご参照ください
完全に自力で作成できるか
管理組合の力のみで長期修繕計画書を一から作成することは非常にハードルが高く困難です。
推定の概算工事費の割り出しで足りる場合には、公益財団法人マンション管理センターの「長期修繕計画作成・修繕積立金算出サービス」の活用も考えられます。
長期修繕計画書は、作成しただけでは終わらない
長期修繕計画書の想定工事単価は、作成時の単価が使用されています。
昨今、建設に掛かるコストは資材、人件費共に高騰しており、5年後に設定した金額で工事が可能か定かではありません。
一度作成した長期修繕計画書も常に見直し、維持する必要があります。
また、管理組合の財政も変化します。財政状況に合わせた見直しを続けることも重要です。
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