「マンション管理士」は国からのお墨付きの資格・・・
マンション管理士という肩書について
わたしは仕事柄、「マンション管理士って何?」と、よく質問を受ける。
そして「儲かるの?」「面白いの?」と質問は続く。
これに対して私は、「ぜんぜん儲からない」と笑って答え、「楽しくはないが、実は困っている人がたくさんいる」と言い訳じみた返答をする。
この会話の後、多くの場合質問は続かないが、逆にここから質問が止まらない人が一定程度いらっしゃる。ときに話が2時間以上続くことも珍しくない。
多くの場合それはマンション管理組合の理事長経験者だ。
マンション管理士とは?
そこで今回は私の肩書について少し説明したい。
マンション管理士は、2001年に制定された「マンション管理適正化の推進に関する法律」に基づく国家資格だ。
「専門的知識をもって、 管理組合の運営その他マンションの管理に関し、管理組合の管理者等又はマンションの区分所有者等の相談に応じ、 助言、指導その他の援助を行うことを業務とする者」とされている。
合格率8-9%の国家資格ではあるが、「食えない資格」として名高く、人気もない。ゆえに受験者数は試験開始直後から20年間連続して減少してきた。(昨年は初めて前年度を上回った。)
全く面白味のない資格のように思われるかもしれないが、私にとってマンション管理は、利害が複雑に絡んだ共有物の管理に知恵と工夫を発揮する仕事である。
例えば、管理費の値上げに対して、高齢の所有者は
「存命中に値上げして欲しくない!」と主張するし、投資目的の所有者は
「値上げしてでも建物の状態を良好に保ちたい!」と考えるだろう。
また、老朽化した設備の要不要も、所有者によってさまざまだ。
マンションの隣に幼稚園建設!
ある時、私が担当するマンションの真横に保育園建設計画が持ち上がった。
地上4階建て、屋上部分に校庭がデザインされた都市型保育園で、背の高い柵で目隠しし、住戸内に目線が入らないよう階高も考慮されていたが、夏には屋上でプール遊びもするという。
マンション内でその建設を不安視する意見が出た。私は管理組合からの依頼を受け、保育園側にマンション内での説明会開催を申し入れた。
マンション内で行われた2回目の説明会の場で、マンション側から意見を求められた私は、
「皆さんのマンションの横に建設されるのが、認可保育園だということにほっとしています。管理が行き届かないもっと別の建物が建つ可能性もあったんですよ。その上、みなさんの要望を受け設計の変更も提案されています。」と感想を述べてみた。
話し合いの場は静まり返り、私は一瞬焦ったが、
「そういえば、そうよね・・・」と女性の発言で、出席していた居住者さんたちに安堵の感が広かった。
隣に建てられる施設が歩み寄りの努力をされる事業者により運営されると認識されたのだと思う。
その後は建設的に話し合いを進めることができた。
不安や動揺でざわついた時に、客観的な意見だと認められるには信頼関係が必要だ。
マンション管理士資格は、国からのお墨付きであり、実はそれなりに意味はあるのだ。
あとがき
マンション管理士の資格試験は毎年11月最終日曜日に実施される。
本当に世間に知られていない資格なのに、その問題は重箱の隅をつつきながら、受験生を引っかけようと必死になっているような”悪意を感じる設問”が多い。また、毎年”底意地が悪い”問題を何問か混ぜて時間を消費させるように作っているのだ。
幸運にも、わたしは一度目の受験で資格取得できたが、この試験を毎年受ける気には到底なれない。
「食えない資格」なのに、このような難易度の試験を課すことに非常に疑問を感じている。本音でいうと、問題文を作っている人の趣味を疑うほどだ。
しかしながら、マンションについてお悩みを持つ方々がわたしに対して語ってくれる話はとても興味深く、「マンション管理士資格」を持っているというと、さらに身を乗り出して話してくださる。
お話を伺う度に、利害が異なる人達との”共同所有”がいかに困難であるかをいつも感じる。
私は、この”共同所有”という困難に対処しようと挑戦する方が好きなのだ。
一緒に苦労したいと感じ、なんならお手伝いできると思っている。
そのために意地の悪い試験も受けたのだ。
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