~管理組合と管理会社の間の深い溝~
理事長の怒り
前回のコラムで、「管理会社商法」を紹介した。
日常の管理業務を安価で受託してマンションに入り込み、修繕工事や設備の取り替えなどを別途、高額で受注することによって利益をたたき出すというものだが、被害者のように見えるマンション所有者もただ耐えているという訳ではない。
管理会社の胡散臭さを見抜き、公然と敵対するマンション所有者も多い。
過去にわたしが担当した某マンションで、理事長から管理組合印を押印していただく必要がある書類に、印がないまま届いたことがあった。「今日中に押印してもらってこい!」という上司の命令で、片道一時間以上のマンションに向かい、在宅されていた理事長に押印をお願いした。
ところが、理事長は激高し、「そんなはずはない!オマエラにこういうことを言われないために、押印した書類にはちゃんとコピーを取っているんだ!」と、書類のコピーをわたしに投げつけた。
コピーを取ってるんや・・・、騙されないぞ!って思ってるんや・・・。
わたしは、理事長の剣幕に呆然となりながら、玄関前に散らばったコピーを拾い集めた。一枚ずつ砂埃を払いながら心を落ち着け、コピーにも押印されていないことを理事長に確認してもらい、ようやく納得頂いた。
職務と不信のはざまで
この理事長はなにも虫の居所が悪いだけで、このような態度を取ったのではない。根本に、「管理会社商法」への強い不信感があるのだ。
お金を払い“使用している”はずの管理会社に、裏でうまいこと高額な商品を買わされている・・・ということを薄々気づいているが、普段は面と向かって怒りをぶつける機会がない。
そこで、理事役員が回ってきたときに、ここぞとばかりに担当者に怒りをぶつけているのだ。
このような場面は、管理会社の担当者をしていれば避けられない。
しかし、矢面に立たされる管理会社の担当者にとってはたまらない。
「管理会社商法」に馴染めず、顧客に誠実に対応しようと考えるタイプであればなお更だ。この場合、会社からの「売ってこい!」という命令と、顧客からの「信頼してなるものか!」という中傷の間で傷つき、身動きが取れなくなり、早い人なら半年経たずに去っていく。こうして、管理会社の担当者は次々入れ替わるのだ。
だが、別のタイプの担当者もいる。
管理組合が管理を丸投げする弊害
前回のコラムで、「大野さんが担当するマンションなら購入したい。」とわたしを勇気づけた係長は、こう言った。
係長 「僕は、管理組合に工事させるのが好きなんですよ。高額で工事をさせるのって普段の仕返しですよ」
これを聞いたとき、わたしは衝撃を受けた。顧客に損害を与えることを日ごろのうっぷんを晴らすチャンスと捉えるとは。なんとも不幸な仕事である。
どちらにしても、マンション所有者は現状が自らに何の利益にもならないことを認識すべきだ。
管理組合は、管理会社に敵対するのではなく、主従関係を越えて対等に渡り合う必要がある。相手を威嚇しても問題解決にはならない。所有者がマンションの維持管理について理解を深め、主体的に参加するほか問題解決の道はないのだ。
[後書き]
第2話では、管理会社時代に衝撃を受けたエピソードとともに、管理会社と管理組合は主従の関係を越えて対等な関係を築くべき理由を書きました。この記事を読んだ家族は、初めて管理会社時代のわたしの苦労を知ったそうです^^。
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