子どものしつけは誰のもの?

マンション内の子供のマナー違反

 今も昔も子供の度を越えたマナーの悪さに、きちんと注意する大人はいるだろう。

マンションのエントランスでスケボーやボール遊びをしている子供がいるから、マナーを守らせるよう管理員さんがもっと注意してほしいとの意見を理事から聞いた。

自分も注意するようにしているが、自分がいないときにもマナー違反を繰り返しているだろうから、雇っている管理員さんがもっと積極的に注意するべきだというのだ。

よくある要望だったのかもしれない。

マナー教育は管理員の仕事?

 しかし、当時、新人のわたしはこの意見を完全に拒絶してしまった。

 そもそも、管理員さんは子供にマナーを守らせる任務を負っていない。

子供にマナーを教えるのは親の役目だ。

親の目が届かないのであればコミュニティが担うべきだろう。

特にマンションでは、エントランスや階段、ソファなどの什器は共有財産であり、それらが子供のマナー違反で傷つけられるのなら、所有者としてマンションのコミュニティ全体で取り組む必要がある。

 さらに、マンションの管理員さんは一般的に超多忙だ。

そのマンションの場合、出勤日数も稼働時間も最低限度で、業務時間内はほぼ掃除に追われている。管理会社からくる資料などのファイリングや各種保守点検の立会などもあり、管理員さんは駆けずり回って働いているのだ。

 また、この管理員さんはエントランス内での子供たちのボール遊びやスケボーを見逃しているわけではない。見かけたら注意していた。

これ以上は無理だ。

理事に噛みつく

 私は反射的に、

「管理員さんは子供に躾をする立場にはありません。躾すべきは親であり、次にマンションの居住者さんですよ。このご意見には承知しかねます。」

と言い放ってしまった。

当然その理事は納得がいかず、管理会社の怠慢だとか管理員の仕事の一部であるとか反論をぶちまけて、理事会は険悪な雰囲気に包まれた。

 その後、この理事は私の上司宛てにクレームの手紙を出し、顧客満足度調査アンケートでは最低点を付ける等された。理事会の運営も困難をきたすこととなり、この理事が退任するまでの一年間、私は神経をすり減らす日々を過ごした。

小さな迷惑行為を放置しない

 今思えば、おそらく、この女性理事は子供のマンション内でのマナーの悪さを見るたびに注意していたのだろう。そんなことをしているのは居住者の中でも自分だけだと孤立感もあったのかもしれない。

新しく来た管理会社の担当者に、何とかするべきだと同意してほしかったのだろう。知恵を絞れば、もっと前向きな付き合いができたはずだと現在では反省もしている。

 とは言え、館内のマナー遵守や子供の見守りまで管理会社に頼るのは危険だ。

実は、マンションの管理は所有者の団体である管理組合が行うものであり、管理会社はほんの一部の業務を委託されているに過ぎない。マナー教育などは管理会社の業務ではないのだ。

 面倒だからといって小さな迷惑行為を放置すれば、様々な場面でマナーを無視する居住者の出現を招くだろう。

口うるさいご近所さんは、今でも必要なのだ。

そもそも、管理員さんは子供にマナーを守らせる任務を負っていない。
子供にマナーを教えるのは親の役目だ。
親の目が届かないのであればコミュニティが担うべきだろう。
特にマンションでは、エントランスや階段、ソファなどの什器は共有財産であり、それらが子供のマナー違反で傷つけられるのなら、所有者としてマンションのコミュニティ全体で取り組む必要がある。

掲載:株式会社ビル新聞社

あとがき

 このとき私が反論した理事からは上司宛に長文の抗議文書が来ていた。

 抗議文を読んだ上司から手紙を渡されたが、いつまでもその手紙を読む気にはなれなかった。

書かれているであろう内容が、読むまでもなく想像できたからだ。

 このコラムで私が知っていただきたいことは、管理会社の担当者も管理員も「従者」ではないということだ。契約した内容だけを粛々と行う者である。

 「気持ちをわかってほしい」とか「誠意を込めて仕事しろ」とか「騙すな」とか、感情をぶつける先ではないのだ。

 管理組合自らが問題可決に立ち向かうことがない時、その原因を管理会社に転嫁する組合がある。

 しかし、それはお門違いだと思う。自ら動かないから、管理会社に「いいようにやられる」のだ。

 その不都合な真実に蓋をして、管理会社を動かそうとしても納得できる結果を得ることは難しいだろう。

 自分たちで”汗をかく”ことが嫌いな方には、マンション住まいは不向きなのだ。

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