大規模修繕工事実施の前提条件

 多くの組合では、大規模修繕計画実施の際には必要な額の修繕積立金が積み上がっていることでしょう。

 一方、必要な額の積立がないために大規模修繕工事の議論が始められない組合も多くみられます。

 しかし、建物診断を行い、優先順位をつけ必要最低限の修繕に絞り、複数の見積もりから事業者を選定できれば、工事を実施する方向で進めることをお勧めします。

  • 診断
  • 優先順位と修繕の絞り込み
  • 相見積り実施

資金計画を立てる

 工事を絞り込んでも積立金が不足する場合、資金調達には2つの方法があります。

資金調達方法メリットデメリット
一括徴収利子の発生がない
積み立て不足を一度に解決できる
その後の修繕積立金値上を抑えられる
所有者が一括で高額な費用の支払いに迫られる
借入所有者の負担が分散できる利子が発生する
借入の返済と積立金の値上げが重なり高額になる

 大規模修繕工事の実施が困難な理由は、これまでの修繕積立金不足が原因の一つと考えられます。これまでの不足を解消するために工事後に資金の返済を先送りにする「借入」という方法はお勧めできません。

 不足を借入で賄えば、積立金の値上げと併せて月額の修繕積立金額は相当な値上がりが必要となります。

 同等のマンションよりはるかに高い修繕積立金となれば、マンションの価格が大きく下落することは避けられません。

 マンションの資産価値を守る観点から、借入ではなく一時徴収で資金不足問題を解消することをお勧めします。

 やむを得ず借入れを選択する場合は、事前説明会を開催し、返済計画についても慎重に検討する必要があります。

ちいさな管理

大規模修繕工事をサポートします。詳しくは下記ページをご覧ください

総会で承認を得る

 大規模修繕工事をするにあたり、下記点について総会承認を得るために総会を招集します。

 時期が合えば通常総会時に決議することも可能ですが、マンションの重大なイベントである大規模修繕工事に関する決議ですので、臨時総会を開催することをお勧めします。

  • 修繕内容とその金額
  • 工事事業者
  • 資金計画(一時徴収または借入をする場合)
  • 修繕積立金値上(必要な場合)

 上記の他にも、決議すべき事項と判断すれば議案化し承認を得ます。

大規模修繕工事説明会の開催

 大規模修繕工事が総会で承認された後、工事開始の1~2ヶ月前に、工事説明会を開催します。この工事説明会は全居住者が対象です。賃貸などで部屋を借りて住まわれている方も説明会開催を通知し出席してもらいましょう。

 説明会では、下記事項を説明します。

  • 修繕内容と期間
  • 現場事務所や資材置き場の場所ほか(工事計画)
  • 各住戸に対する影響(足場の設置やバルコニーへの立ち入りなど)
  • 修繕工事期間中の問い合わせ先 など

 説明会は、施工事業者が説明してくれることが多いですが、理事会は上記内容を事前に把握する必要があります。

 説明会の欠席居住者には、文書で通達します。

【ちょこっとコラム】資金が不足していても修繕工事はすべきか

 修繕資金が大幅に不足しているときに、一時徴収や借入れをしでても大規模修繕工事を実施するべきか・・・。

 修繕積立金の積立が不足している管理組合ならみなさん疑問を持つことでしょう。

 修繕を実施するにしても見送るにしてもメリット、デメリットがあります。下の表に整理しました。

実施/未実施メリットデメリット
修繕を実施する建物の劣化を食い止めることが出来る
建物の外形を保つことが出来る
一時徴収や借入により所有者の負担が増す
修繕を見送る所有者の資金的な負担が増えない劣化が進行し、建物の健全な状態が維持できない
資産価値が低下し、貸し出しや売却が困難になる

 いずれにしても所有者の負担となりますが、「いつ」その負担を負うか、時期の違いだけでしょう。

 上記の表を、”がんの治療”と読み替えてみてください。

 治療にはお金がかかりますが、いつ治療に取り掛かるかで予後に違いが出てきます。

 早期発見早期治療が病の治療に欠かせないように、マンションの修繕と積立金不足解消も、逃げずに解決策を講じる以外に道はないのです。

 (結論)必要最低限の修繕を適正価格で今すぐ実施するしかない

現在進行中のサポート一例

現在、ちいさな管理でサポートしている管理組合運営サポートの一例をご紹介します

 1,建物の簡易診断(一級建築士対応)

 大規模修繕工事時期がすでに到来しているのであれば、高額な「建物劣化診断」は実施せず、一級建築士による簡易診断で費用で支出削減を行います。

 記事:「建物の劣化状況を診断する」をご参照ください

 2,大規模修繕工事のための概算工事費の取得(一級建築士対応)

 大規模修繕工事には相見積もり取得が必須です。公平な相見積もりの取得ができるように概算工事費を作成します。

 3,大規模修繕工事実施に向けた修繕積立金シミュレーション作成(マンション管理士対応)

 修繕積立金は単に値上げすればよいというものではありません。2倍、3倍と大きく値上するのではなく、複数のシミュレーションを基に値上げ幅を慎重に検討し、今後取るべき費用削減策の検討も同時に行います。

 4,修繕積立金改定の実施(マンション管理士対応)

 修繕積立金シミュレーションにおいて必要であれば、修繕積立金の値上げを理事会で決定し、総会において積立金値上案を採決します。

 特に、修繕積立金の値上げだけでなく大規模修繕のために一時徴収や借入を行う場合は、事前説明会を開催することが推奨されます。

 5, 修繕計画と見積明細の作成・・・

 6,相見積もり取得先の検討・・・

 7, 相見積もりの取得と発注先選定・・・

マンション管理士、マンション会計のエキスパート、一級建築士がチームで、必要に応じたサポートを致します。

<特集>手順を踏めば組合でできる!~大規模修繕工事の進め方~
 大規模修繕工事をコントロールすることは、長期的なマンション運営の明暗を分けると言って過言ではありません。
 この特集では、管理組合が大規模修繕工事を主導するために、手順のひとつひとつを丁寧にご説明します。

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