マンション管理員さん、雨ニモマケズ

管理員の業務は激務だ

 今回は、マンション管理の要である管理員さんの仕事についてお話ししたい。

 管理員業務は激務だ。

マンション到着後、まず館内をくまなく巡回し異常がないかを確認する。

次は清掃だ。ゴミ庫、エントランス、廊下、庭、駐輪場、駐車場と清掃場所はかなり広い。ただでさえ時間が掛かるのに、ルール違反のゴミ捨てへの対応にも悩まされ、夏場の暑さにも負けず、植栽への散水にも手が抜けない。

清掃が終われば、管理会社からの業務指示への対応だ。「消防点検の日程調整をしろ」だとか、「給湯器販売キャンペーンのお知らせを配布しろ」とか、「館内清掃チェックリストを作れ」「業務改善策の提案をしろ」など際限ない指示を一つ一つこなさなければならない。

居住者からの問い合わせ 雨アラレ

 これら基本業務で右往左往している最中に、居住者さんからの依頼や問い合わせが舞い込む。

「ベランダに干している洗濯物に蜂が止まって怖い」と言われれば、温和なタイプの蜂ですという掲示物を貼り、

「部屋にアリが侵入する」との相談には、行って“アリの巣ころり”が効くと提案し、

「傘で駐輪ラックを占拠する人がいる」という苦情があれば、傘を撤去するとの通告文を貼る。

「自分の家の格子戸が風でカタカタいってうるさい」と言われれば、経年劣化は居住者負担で修理するよう説明する。

「猫が鳴いている。」との報告には、餌やりしないでと貼り紙し、

「駐車場に停めてあった車がなくなった」との苦情には警察に届け出るようアドバイス。

「隣の家で使用する柔軟剤の強い香りで気分が悪くなる」「隣の部屋の換気扇の下で喫煙する煙が窓から入ってくる」など、中には対応しようのない苦情もあるが、これらについても一通り話を聞かなければならない。

 まさに、“雨ニモマケズ”の世界である。

着任して間もない管理員さんの多くは、「管理員ってこんなに大変な業務なのか。」と就業を後悔するものだ。

苦労の後に 雲ハレル

 しかし、苦労しながらも業務に慣れてくる。着任2年目あたりから、マンション居住者さんからも管理員として認知され、挨拶や日常会話を交わしたりするようになると、どの部屋にどんな人が住んでいるかまで把握し、居住者さんからの依頼等に工夫して取り組むようになる。

そして、挨拶だけでなく、感謝や労いの言葉を住人から掛けられることが増える。

マンション担当者を育てる ヒカリ

 こうして、マンションに愛着を抱き、使命感を持ってより誠実に業務に当たられる管理員さんを私は何人も知っている。

 優秀な管理員さんは、居住者さんにとってかけ替えのない存在だが、管理会社の担当者にとっても同様だ。マンション管理を円滑に行えるかどうかは、管理員さんと居住者さんとの信頼関係が大きく影響しているからだ。

さらに、長く勤める管理員さんは管理会社の内部情報にも精通している。社内営業に無頓着だった私は、上司や同僚の人柄や評判、社内の噂、果ては人事異動の見通しまで、管理員さんから教えられ、助けられた。

 そんな管理員さんに私は感謝してもしきれないものだった。

掲載:株式会社ビル新聞社

あとがき

 管理室で座っているだけの管理員さんは今や絶滅危惧種に近い。

現実には、管理員業務と清掃業務を兼ねる管理員さんが多く、まじめな人ほど息つく暇もない。

その上最近では、人手不足と賃金の上昇から、専属の管理員を置かないマンションが特に都心で増えてきている。

複数のマンションを巡回し、清掃や管理員業務をこなす巡回管理員さんだ。

1か所のマンションに通うのではなく、複数のマンションを巡回するのだが、移動時間もかかる上に、それぞれのマンションごとに仕様の異なる清掃や管理をこなさなくてはならず、さらに激務となる。

”のんびり管理員さん”をイメージして職務に就くと面食らって当然だ。

 一方、慣れた管理員さんの持つ情報量は底知れない。

わたしに人事情報まで教えてくれた管理員さんは管理員同士で広いネットワークを持っており、○○部長や△課長の人柄や部下に対する態度など、驚くほど詳しかった。

人事に無関心なわたしを心配して、「いいか、自分の身を守らんといかんよ」など、アドバイスいただいたものだ。

 わたしは、マンション担当者とは、管理員さんが活躍できるようにバックアップする仕事だと思っている。マンションの居住者さんと上手くやっていくために働くのではないのだ。

それは、管理員さんが日常的にしてくれているのだから。

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