「管理会社の保険祭り」騒動の落とし穴と教訓

マンション保険の保険料抑制のために

現在、マンション管理の専門家として、マンション保険に関する冊子作成をお手伝いしている。マンション保険とは、管理組合が加入するマンションの共用部分のリスクに備える火災保険だ。作成しているのは、マンション保険の成り立ちから保険料抑制方法までをカバーする冊子だ。

今回は、この冊子には書けない、マンションの保険に関するエピソードをご紹介しよう。

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ノルマ達成のためのドタバタ

私が管理会社でマンション担当者として勤務していたある春先のことだ。期末が近付いているのに、所属する支店の営業利益が目標にほど遠く、現状ではノルマ達成が不可能であることが明らかとなった。そこで課長は、営業会議で課員に大号令をかけた。「マンション共用部の不具合を総点検し、保険を使って修繕するよう管理組合に押し込み、営業ノルマ達成を実現しよう!」 

 この大号令の下わたしたち担当者は、チームで社用車に乗り込み、普段は見落としがちな共用部の小さな疵や凹みなど“、保険修繕できそうな箇所”を探すため、各マンションを転戦した。これ以降、保険修繕のための業務で忙殺されることになった。

保険修繕が利用されるわけ

なぜ、保険修繕なのか? 費用を保険で賄うことができれば、修繕の実施について理事会が反対することはまれだ。また、保険会社は少額の請求に対するチェックが甘く、管理会社がかなりの利益をのせていたとしても、審査で引っかかることはまずない。ノルマ達成の手段として課長には妙案に思えたのだろう。

騒動の顛末

ところが、そうは問屋が卸さなかった。あまりに大量の修繕見積を依頼したため、修繕会社の見積作成が追い付かず、理事会に修繕の提案が掛けられなかったのだ。結局、年度末までに修繕が終了した工事はほんのわずかで、課のノルマ達成には何ら効果を及ぼさなかった。

私は、この騒動を「管理会社の保険祭り」と名付けた。

皆さんはすでにご存じのように、管理会社のマンション担当者の中心業務は、担当するマンションを平穏に管理することではない。厳しい売り上げ目標が課せられ、評価基準はノルマ達成だ。チームとしても売り上げ目標があり、課長は何とか達成しようと「祭り」を開催したのだった。

保険料爆上げに繋がる保険祭り

 これは7年程前の話である。仮に、管理会社が「保険祭り」を現在も行っていれば、大変な問題になるだろう。

当時、事故件数の多寡は次回保険料算出に影響しなかったが、現在は一定の査定期間を設け、保険金受け取り回数をカウントし、次回保険料に反映させる制度が導入されている。査定期間内に保険を使用した不要不急の修繕を実施すれば、次回の火災保険料は爆上がりする恐れがある。たった数万円の保険金を受け取ったために、次回の保険料が何十万円も値上がりしてしまった、ということが実際にあるのだ。管理会社のノルマ追求が、管理組合の不利益に直結することになる。

管理組合は、保険申請の際にも細心の注意を払わなければならない。保険料の値上がりを抑えるために、組合自らがマンション保険の仕組みを知る必要がある。

組合を取り巻く状況は厳しさを増すばかりだ。

あとがき

この「保険祭り」は、わたしが管理会社に担当者として入社後2年目に開催された。管理会社のビジネスモデルが、わたしの常識とかけ離れていることを教えてくれたエピソードだ。

管理組合は、保険の仕組みについて理解し、保険料を抑制するために注意を払わなければならないし、管理会社商法というビジネススキームを知り、彼らに対しても慎重に付き合わなければらないのだ。

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このテキストは、マンション保険バスターズさんの監修の下、ちいさな管理で作成をお手伝したものです。

テキスト内容は、

□ マンション保険とは?
□ マンション保険はどんなときに使えるの?
□ 保険料を抑制する方法 ほか

管理組合が知るべきマンション保険の知識を網羅し、保険料抑制方法も詳しくご説明しています。 マンション保険にお悩みの組合は、是非ご活用ください!

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提供:株式会社ビル新聞社

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