”目覚めた人”は、組合の改革を一人で取り組むべからず

マンション所有者からの相談

マンション管理士として管理組合の運営をサポートする事業を立ち上げてから、丸3年が経過した。以前は管理会社の社員だった私が、組合のアドバイザーと認識されるようになった。立場が変わればこうもいろんな悩みを相談されるのか?と驚く日々だ。

事業の特徴として、管理組合だけでなく区分所有者個人から相談を受けることが多い。「理事会がなにもしない」とか、「組合が機能していない」などを嘆き、孤軍奮闘する所有者達だ。

マンションの「目覚めた人」とは?

私はこれらの人と話すとき、あなたは管理組合の問題に「目覚めた人」だ、と話すことがある。この「目覚めた人」は、映画「マトリックス」に登場する、主人公を含む赤いクスリを飲んだ人のことだ。赤いクスリを飲むとは、現実の世界を知ることの喩えだ。管理組合の置かれた現実に「覚醒」した人を、私は「目覚めた人」と呼んでいるのだ。

共同所有の泣き所

覚醒することは、幸せなこととは限らない。目覚めてしまったがゆえに組合運営に熱心に取り組み改革を図ろうとすると、他の組合員から通りすがりにこんなことを言われたりする。

「あまり熱心になると、周りからなんて言われるか、わからないわよ・・・」

「この人が、積立金の値上げをしたおばさんよ・・・」

「工事のことで口出しした人が、実は裏で癒着していたらしいわよ・・」

組合の抱える問題に覚醒したがゆえに苦労を背負い、その上このような言葉を投げかけられた「目覚めた人」は心を挫かれ、時に病んでしまう。(心を病むくらいなら組合活動を止めることをお奨めしている)

ある理事長が私にこういった。

「修繕工事のための委員会を設置したいが、委員が少なすぎると外野からの攻撃に耐えられない。だから、少数で構成する委員会は立ち上げる気はない。」

少数の委員では他の組合員からの批判や誹謗中傷に耐えられない恐れがあり、委員会を維持することは難しいというわけだ。

この理事長はマンションという共同所有物の実情を相当理解していると思う。不幸なことだが、頑張る組合員や理事・委員への誹謗中傷はマンションあるあるの一つだ。総会に出席することも無く、批判や陰口を流布する人は珍しくない。

管理組合改革、一人で取り組むべからず

私は、管理組合改革に苦労している方から相談を受けると、いつもアドバイスすることがある。それは、組合改革は“一人で取り組まない”ということだ。まっとうな内容でも、個人的な意見だと見なされれば、いとも簡単に却下される。しかし複数名での申し入れは無下にできず、扱いがまったく異なる。それが管理組合の持つ性質だ。問題意識を共有し、解決に向けて共に行動してれる仲間なしに、一人で取り組む組合改革は失敗する可能性が高いと思う。

「言うは易し、行うは難し」相当に困難なことをアドバイスしていることを重々承知だ。しかし、困難に負けず改革を押し進める稀有な方が少なからず存在することに驚かされる。彼・彼女らの活躍は「マトリックス」の主人公に匹敵するかもしれない。そんな人たちを応援することが、現在の私の仕事である。

あとがき

 このコラムをご愛読いただいている皆さんは既にご存知だが、管理組合が置かれた環境は相当に厳しい。

所有者の高齢化や建物の老朽化が問題視されているが、ほかにも、管理会社が取り仕切る大規模修繕工事の価格調整、組合をわがものとする「外部管理者管理方式」まで、問題が山積している。

 このような状況を知り、放置できないと改革に乗り出す人が「目覚めた人」となる。一方、現状を知っていても、目をつぶる人も当然存在する。修繕積立金が3倍に値上がりした途端、部屋を売却する人などもそうかもしれない。これは「生き方」の問題なので、「売った方がいいだろうか?」という相談にも、わたしは乗っている。

 もし、あたなが「目覚め」てしまったとしたら、改革に取り組むのは、一日でも早いほうが良い。世の中には「何事も遅すぎることはない」という言葉があるが、組合改革は「遅すぎた」という場合があると思う。

組合の立て直し、リミットはいつか……?

また、書いてみようと思う。

提供:株式会社ビル新聞社

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