マンション管理員、こだわりは十人十色
マンションを”平穏にたもつ”技術とは
管理員さんには、管理事務専門と清掃兼務の二つのタイプがある。大規模マンションともなれば複数の管理員さんと清掃員さんが勤務し大所帯だ。私が管理会社時代に得た最大の財産は、こうしたチームと共に「マンションを平穏に保つ」技術を身に付けたことだ。
例外はあるが、管理員さんは概ね勤勉で誠実な方々だった。中に、ある種のこだわりが非常に強い人がいて、私は上手く折り合いを付けながら業務に当たる必要があった。
管理員さんのこだわり
ある管理員さんは、「清掃を終えた雑巾を洗うのに1時間以上時間がかかる」という。きれい好きなのだろうか…?その割には、館内はピカピカというわけでもない。
「お願いですから、雑巾を洗う時間は10分ぐらいにしてください」と懇願する私に、「洗う雑巾は1枚や2枚でない!」と、譲ってくれない。どうやら、雑巾を洗うことに心血を注いでいるらしい。
話し合いの結果、使い捨てのウエスを購入し、清掃に当たることにした。
管理員さんのこだわりと居住者の無関心
ある管理員さんは、外階段(非常階段)の手すりに飛来する鳩のフンが気になって仕方がなく、毎日長時間をその清掃に費やしているという。
「とにかく、ハトをなんとかしたい」と悩んでいた。
鳩の飛来元を探してみると、隣接するマンションのベランダがゴミの山と化しており、鳩の巣になっていた。
管理員さんと相談の結果、剣山のような猫除けマットを鳩が飛来する場所に設置してみたが、マットをよけて別の腰壁に飛来するようになった。
管理員さんは、負けじとマットを追加する。そのうち外階段は猫除けマットで占拠され、フンの被害はなくなったが外階段の見栄えはすこぶる悪くなってしまった。
私は居住者からのクレームを危惧したが反応は一切なく、管理員さんのこだわりだけが浮き彫りになった。
手に負えない!? 管理員さんのこだわり
またある管理員さんは、とにかく中庭に生える雑草が気になって仕方ないという。多い時は草引きに4時間以上を費やし、くたびれるらしい。管理員さんの業務は多岐にわたる。時間に余裕はないはずだ。
しかも居住者でさえ目に入らない裏庭の雑草に、貴重な時間をかけてほしくない。夏場は熱中症の危険もあるため、草引きはほどほどにして館内の清掃に注力するよう指導をしたのだが、管理員さんは雑草の駆逐に情熱を燃やしつづけた。
マンションの担当者、成長す
もちろん、清掃に熱意どころか関心もない管理員さんもいる。
清掃に対する過度な追及も問題だが、おざなりでも困る。そんな方には、きれいに見えるための最低限のポイントを伝授する。例えば、エントランスの自動ドアのような「(居住者)が立ち止まる所」や、エレベーター内の鏡といった「光る所」を「ピカピカにする」という、マンション清掃の鉄則だ。
指導したり、お願いしたり、説得したり…。
管理員さんたちの個性に右往左往する日々だった。とはいえ、「マンションを平穏に保つ」ために管理員さんが活躍できる環境を整えることは担当者の務めだ。試行錯誤を繰り返すうち、いつしか私も立派なマンションのマニアと化していた。

コラムあとがき
管理会社を退職し、マンション管理士として活動する中でも、優秀な管理員さんに出くわす。
担当者の不手際をカバーするのも、居住者からのクレームを担当者に行く前に解決するのも、優秀な管理員さんのなせる業だ。マンションを愛し、熱意と誠意をもって働く姿に、いつも頭が下がる。
管理会社は、”管理員賃金の値上げのため”を口実にして管理委託費の値上げを提示するが、実際には管理員さんの時給はほぼ最低賃金だ。値上げの一部でも管理員さんや清掃員さんに還元する管理会社があれば、私はそこをおすすめしたい。
管理会社を、ネームバリューや管理戸数、親会社の名前などで判断することは無意味だ。
優秀な管理員さんをふさわしい賃金で採用しているかどうか、この点で管理会社の「質」を判断できる業界になってほしい。
