大規模修繕工事をめぐる魑魅魍魎

大規模修繕工事をめるぐ思惑・・・

 大規模修繕工事ほど、マンション管理の様々な問題を浮き彫りにするイベントはないだろう。

まず、資金(修繕積立金)が積み上がっていないと、工事に着手できない。組合によっては、2回目以降の大規模修繕工事で早くも資金不足に陥ることもある。そうなると、修繕積立金の値上げ、もしくは不足分の徴収に迫られ、組合の議論は紛糾する。

一方、資金が潤沢にあると、理事長が怪しげな建築士を連れて来たり、管理組合員から「知り合いの会社に発注しろ」などの圧力がかかることもある。

とはいえ、管理組合員同士であれば同じ区分所有者であり、基本的には利害を共有している。問題となるのは管理会社である。

管理会社も必死

 大手の管理会社は、管理業者登録と併せて建設業の許可を得ている。大規模修繕工事の元請となるためだ。

ところが、管理会社には、多くの場合、大規模修繕工事を実際に行う建築系の部署はない。マンションから受注した大規模修繕工事を2次請負に丸投げすれば事足りるからだ。管理会社が息のかかった工事事業者を管理組合に紹介し、工事を受注させるのも常套手段だ。

管理会社にとって大規模修繕は少労力で多額の利益をあげる絶好の機会であり、この日のために日常管理を受任していると言っても過言ではないだろう。

管理会社による受注工作

 Aさんは、大規修繕工事を管理会社に委託することがほぼ確定したマンションの理事長に新しく就任された。相見積もりもなく、一切を管理会社に丸投げする形に疑問を持ち、大規模修繕工事専門業者数社に相見積もりを依頼した。

相見積もり取得は難航したが、これに応じた数社の中から、当初の2/3以下の価格を提示した大手の事業者に発注することを宣言した。

 この展開に慌てたのは管理会社だった。「発注先を変更するなんて話が違う!」、「変更するなら、受注した事業者から少なくとも1千万円は頂かないと!」と総会で口走ってしまった。

別のマンションでは、管理会社に大規模修繕工事の元請を依頼した。しかし、相見積もりが一つも提示されないことに疑念が生じ、理事長が旧知の事業者に依頼したところ、驚くほど低い見積もりの提示を受けた。しかし、工事は引き受けられないという。

事業者 「見積もりは出すが、工事の受注は出来ない。」

理事長 「どうしてだ?!昔のよしみで助けてほしい」

事業者 「この仕事を請ければ、あんたの所の管理会社から仕事がもらえなくなる・・。わかってほしい・・・。」

と、打ち明けられた。

仕方なく、新しく入手した見積もりを基に管理会社と交渉した。勝ち取った値引きは相当な額だった。私は実際の工事が確実に行われるか危惧した。管理会社の「上前」が大幅値引きされるとは考えにくいからだ。

管理会社は、大規模修繕工事から多額の利益を得るため、「網」を張り巡らせている。彼らも必死なのだ。

とにかく、関係者を魅了して止まない大規模修繕工事であるが、時にこの魔力は、ただならぬ生業の人達をも引き寄せてしまう。

  つづく

YouTubeで大規模修繕工事について解説しています ▼

マンションの大規模修繕工事を成功させるための秘訣を解説した動画

提供:株式会社ビル新聞社

あとがき

 この度、ビル新聞さんに”大規模修繕工事”をめぐる騒動の経験談を全6回に渡り掲載いただいた。

この騒動は、マンション担当者時代の経験の中でも群を抜いて強烈で、今でも恐ろしく思うほどだ。大規模修繕工事という管理組合の一大イベントに引き寄せられる様々な稼業の中でも特別なケースを書いた。

 ここで話す”管理組合を揺るがす稼業の人々”を誘引しているのは、管理組合に蔓延する「無関心」に他ならない。所有者の「無関心」が彼らにとってどれほど魅力的なのかご理解いただけるだろう。

たんなるドタバタ劇では済まされない、現実をご紹介しようと思う。

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