管理員さんの、嫌な予感・・
珍しすぎる申し入れ
マンションの大規模修繕工事は15年程度毎に実施される大掛かりな工事だ。数億円が工事に費やされることも珍しくない。この工事から利益を得るために“儲けにならない”日々の管理業務を請け負う管理会社すらある。大規模修繕工事という“うま味”に惹き寄せられるのは、管理会社だけではない。
始まりは、管理員さんからの一報だった。
“わずかにオラオラ?”といった風体の新所有者さんが、「わたしは仕事柄、建築工事に詳しいので、理事になって工事の計画に参加したい。」と、わざわざ管理員室に来たという。
このマンションの理事選出は輪番制であり、立候補制度はない。ゆえに理事に立候補することはできないと管理員さんから何度も説明してもらった。しかし、同様の申し入れがその後も続いた。
管理員さん 「また、例の新所有者さんが管理室に来ましたよ。」
大野 「え?またですか?理事長には理事会参加は不承認と言われていますから、とお伝えください。」
管理員さん 「理事会に説明させてほしいと言っています・・・。理事長宅にも訪問しているみたい。」
大野 「ええ?!そんなにやりたいんですか?いったい何だろう。」
管理員さんはその新所有者さんの言動について訝しく思い、毅然とお断りしていた。一方、担当者のわたしの方は暢気なものだった。大きなマンションの大規模修繕工事は一筋縄ではいかないという現実を、まだ全く知らなかった。
お連れ様は突然に
ある日、その新所有者さんから電話があった。
「管理会社の近くにいるから、今から行く。」という。
電話越しの口調は非常に荒かった。マンションで会った時とは異なり、いわゆる「ガチなオラオラ系」であった。30分程して現れた新所有者さんには連れがいた。
名刺を差し出し挨拶をするか弱い私に、お連れ様は名乗りもせず、
「マンションの所有者はわしや。こいつには住まわせとるだけや。」
と述べた。
お連れ様の主張
私は乗り込んできたお連れ様に対し、
「え!所有者は、〇●さんではなかったのですか?」と驚いて尋ねた。
お連れ様は、
「所有者は自分であり、社員の〇●に住まわせている。」と述べ、以下の内容をまくしたてた。
①居住させている社員が理事会に立候補できなかったは不当だ。
②管理会社が理事会を取り込んで、大規模修繕工事を独断的に実施しようとしている。
③自分の会社は工事関係の会社であり、大規模修繕工事に詳しい。
④自分が所有するマンションを管理会社の自由にさせないぞ。
さらに、管理会社がいかに悪徳で信用ならないことばかりをして管理組合を欺いているか云々、大声で演説し続けた。
一通り演説が終了した頃私は、
「そのような話は当社ではありません!と思っています!少なくとも私は違います。もしそのようなことが本当であれば、大変な問題ですので、すぐに上司を呼んでこなければならないと思います。」
と告げると、
「まあええ、仕方ない。上司呼べや。」
というセリフを承った。
「すぐに呼んでまいりますので、まずは名刺を頂戴したい。」と切り出すわたし。
お連れ様はポケットから名刺を取り出した。
つづく
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あとがき
このサイトでは、管理員さんがいかに重要な役割を果たすかを様々な形でご紹介しているが、今回の話ほど管理員さんの存在感を感じるエピソードはないと思う。
管理組合とはどういうものなのかを、これまでの業務の中で理解している管理員さんは、時にマンション担当者よりはるかに大きな役割を果たす。管理員さんの嫌な予感は的中するのだが、その後の活躍も素晴らしいものだった。
管理組合は、彼、彼女ら管理員たちの能力を評価し、大切にする必要があることが分かるだろう。
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