シリーズ、大規模修繕工事狂騒曲 第3話
前回のおさらい
大規模修繕工事を前にしたあるマンションの管理室に、「理事会に参加して大規模修繕工事に関わりたい」と何度も申し入れる新居住者さんが現れた。そしてある日突然そのマンションを管理する管理会社の事務所に現れた新居住さんには「オレが所有者だ」と主張するお連れ様が一緒だった・・・。
堅気でない人が来た!
管理会社の悪行を上げ連ねるお連れ様だったが、具体的には何の要求も口にしない。決め台詞は、「わかってるやろ」。私にわかったのは、堅気でない人が来た・・・ということだけだった。
頂戴したお連れ様の名刺を示し経緯を説明すると、上司は「またこいつか!」と天を仰いだ。幸いなことに、お連れ様は私の上司のお知り合いのようだ。わたしの懇願に負け、上司は渋々面談に参加することとなった。
上司と”お連れ様”の関係
「ご無沙汰しています。」とお連れ様に挨拶する上司。表面上は懐かしい関係者との対面のようだ。和やかに面談は進んだ。
お連れ様 「おたくも分かってると思うけど、所有者として大規模修繕工事を管理会社の好きにはさせへんで。」
上司 「〇●さん、それは管理組合さんが決めることですよ。」
お連れ様 「分かったようなことを言うなや。」
上司 「(新所有者さんの)出席の必要はないと理事会が決議してると聞いています。」
お連れ様 「せやから、わしのマンションで管理会社の勝手にはさせんぞ!と言いに来とるんや。」
管理会社がいかに管理組合を食い物しているかを長々と演説し、お連れ様は
「ほな、よろしく頼むわな。」と意気揚々と帰っていた。
何をどう頼まれたのか、どうしたらよいのか、皆目見当つかない私に対し、上司は細心の注意を払えと指導した。
しょせんは他人事?
上司の話はこうだ。お連れ様の会社は、大規模修繕工事を目前に控えたマンションの区分所有者となり、社員をその居住者として送り込む。(実際には居住しない)そして、理事会や修繕委員会に入り込み、お連れ様の会社とコラボする大規模修繕工事専門の施工事業者に受注させるよう理事会を誘導。そして多額の成果報酬を裏で得るというのだ。
当時わたしが担当するマンションは大規模修繕工事の実施に向けて検討を始める時期を迎えていた。マンションの規模も大きく、工事費用は億単位になる。上司の話とぴったり符合するではないか。
上司 「以前担当したマンションにもあの方が区分所有者として登場し、大規模修繕工事へ介入してね。最終的に訴訟となったよ。」
大野 「訴訟?!大変じゃないですか!それで、どうなったんですか?その組合は」
上司 「今も裁判してるだろうけど、もう関係ない。そのマンションとの管理委託契約を解除したからね。」
大野 「ええっ!?」
おかしな家業を営む人物が登場した。一刻も早く管理員さんに説明して、理事会との作戦会議が必要だ。上司は助けてくれそうにない。混乱に陥った組合から管理会社は手を引けば済むと思っている。このままでは二の舞だ。
それだけは何とか避けたい・・・。
つづく・・・
あとがき
わたしはこれまで、「堅気でない」雰囲気の方を仕事相手にした経験がない。今回現れた、新所有者の”お連れ様”は、面談中”含みを持たせた会話”を続け、怪しさ満載だった。渋々面談に同席した上司もまた、表面的な会話に終始し「あやしい」という印象を私は持った。いったい何だろうこの業界は・・・。
しかし、この怪しい”お連れ様”が、上司の知り合いだったことは、管理組合にとって非常にラッキーだった。早期に素性が判明したからだ。さすが大手の管理会社だ・・。この点ばかりは、感心したものだった。


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