それは管理会社?!

「恐れるもの」それは・・・

マンションのフロント(担当者)が「恐れるもの」には、枚挙にいとまがない。火事、自然災害、漏水、管理費等の長期滞納、管理組合財政の枯渇、独裁理事長等々。

これら「恐れるもの」が煮詰まっているのが、築40年を超えたマンションだ。

数度の大規模修繕工事を経て管理組合財政は枯渇していてもおかしくない。配管が適切に管理されていなければ漏水は頻発しているだろう。入居者も高齢化している可能性が高く、高額な管理費を支払う余力が無くなっているかもしれないし、住居管理に対する体力・気力も失っているかもしれない。そうなれば、自然災害などに対する備えは全く期待できない。

「恐れるもの」それは・・・火災

火災も例外ではない。ある時、先輩が担当する築40年ほどのマンションで火災が発生した。幸い、燃えたのは火元の一室のみであった。ひと安心したのも束の間、管理会社に対するクレームが持ち上がったのだ。問題となったのは消火のために水浸しになった周辺の部屋だった。

大野:「近隣の延焼について、火元が賠償責任を負わないことは皆さんご存じでしょう。ご自身で掛けている火災保険で復旧するしかないのに、苦情が出ているのですか?」

先輩:「ローンを完済して、火災保険切れの部屋が数戸あってね。自腹で復旧になるから大クレーム。完済の所有者に対して火災保険に新たに加入するよう指導しなかった管理会社の責任だとせめられているんだよ。」

溺れる者は藁をもつかむとはこの事か。だが、管理会社が被害を補償することは有り得ない。先輩がこの事態をどのように収めたのか詳細は不明だ。

最も「恐れるもの」それは、管理会社商法

一方、経験が浅く、煮詰まったマンションに縁が無かった頃の私にも「恐れるもの」はあった。

それは、所属する管理会社から下される「売ってこい!」の命令だ。提案するだけで不信感を買うじゃないか!?という代物から、そもそも故障が発生していない設備の保守契約まで、さまざまな商品やサービスの提案という営業を余儀なくされていた。

ある時、担当する築15年のマンションに、長期修繕計画でインターホンの更新を予定する年度が来た。インターホン更新は、エントランスの親機と各戸内の子機を一括で取り換える。費用は数百万円に上り、慎重な検討を要する案件だ。このマンションのインターホンに特段故障は発生していなかった。

要するに、管理会社が長期修繕計画書に組み込んだインターホン更新の時期が来たというだけの話である。理事会は、時期尚早につき現時点での交換不要と結論を出した。

社内に戻り、交換見送りを上司に報告していたところ、他所の係長の怒声が私の耳に飛び込んできた。

「四の五の言わさずに、やらせりゃいいんだよ!」。

いつもは威勢の良いわたしであったが、この時ばかりはのけぞり、返す言葉を思い付かなかった。

「おひかえなすって。どちらの組の兄貴でいらっしゃいますか。堅気の者には、かいもく検討つきかね申す。」とでも言うべきだったのか。

とにかく、正体不明の身内ほど怖いものはない。

提供:株式会社ビル新聞社

あとがき

 わたしは、自分の上司に報告していたのだが、「工事をやらせろ」と、隣のチームの上席から喝が飛んできた。驚いて言葉を失ったが、その後、非常に腹が立った。この上司のように、売上げ重視で管理組合に無理な工事を押し付ける「管理会社商法」こそが、現場の担当者の首を絞める土壌を作ってきたからだ。

顧客からは信頼されず、時に罵倒され、社内では「自社利益ファースト」を求められ、マンション担当者は短期で離職する。管理会社の人手不足は、管理会社の”儲けの仕組み”がその最たる要因だ。単に人がいないのではなく、人が続けたいと思えないのだ。

内側から業界が変化できないとすれば、外側から変革を余儀なくされるだろうと予測している。今まさに、その時が来ているのではないかと思う。

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