鹿児島県マンション管理組合連合会 会報「かわらばん」に寄稿しました

朝いちの電話で緊張する

マンション共用部、特にエントランス周辺には、自動扉や壁面などガラスが多用されている。空間を広く感じさせ、見栄えをよくするためだろう。時に、これらガラス製部材は、マンション管理に携わる者の心を温めることがある。

管理会社の担当者として勤務していたある朝、担当するマンションから電話が掛かってきた。

「エントランスの自動扉横のガラス壁が割られている・・・」という。

正確を期すると、割ろうとしたが割れず、破片がエントランス中に散乱しているらしい。

強盗が正面玄関を破って侵入を試みたのか?警備会社に緊急出動を依頼した。

駆け付けた警備員によると、自動扉横のガラス壁が外側から「関係者以外立ち入り禁止」の自立式看板で打ち破ろうとされ、小さな穴が開いているらしい。

朝いちの電話で感激する

警察に連絡か?とため息をついているところへ、同マンションの居住者から小声の架電があった。

居住者「昨夜、エントランスのガラスを割りました。昨日はかなり酔っぱらっていて、オートロックが開かなくて腹立って壊してしまいました・・・。すみません。」

犯人捜しのために奔走しなければならないと予測していた私は、この電話に小躍りした。朝一番に名乗り出てくれた!なんて誠実な!

大野「わざわざお電話くださり、ありがとうございます!お怪我はありませんでしたか?」

居住者「怪我はありません・・・。この後どうしたらいいですか?」

大野「早急にガラスを取り換えますが、費用をご請求することになると思います。」

共用部の復旧には同じグレードの材料を採用し、外観も初期の姿に近づける必要がある。割られたガラスは3メートル以上あり、厚みのある特注の強化ガラスだった。住戸のガラス交換費用とは比べ物にならない。そのことをお伝えすると、電話口の声はさらに小さくなった。

大野「でも、保険に入られていませんか?保険でカバーできる場合がありますよ。」

居住者「・・・・」

大野「???保険に加入されていないのですか?」

居住者「あの・・・、声が大きいです・・・」

嬉しくて舞い上がったマンション担当者は、二日酔いの相手に対し大声でまくしたててしまっていた。

居住者の誠実さは伝播する

別のマンションでは、共用廊下のガラス壁を割ってしまったという小学生が母親に促され管理員室に来た。「むしゃくしゃすることがあって蹴ったらひびが入った」という。自ら申し出た子供の姿に、管理員さんの心はわしずかみにされた。管理会社がガラスを修理すると高額なることは明らかだ。これを回避するため、地域の良心的なガラス屋さんを紹介し修理を直接依頼するようことづけた。

ひび割れたガラス壁は速やかに交換され、他の居住者から何の苦情も発生しなかった。

事故が起こっても早急に相談頂ければ問題の解決は早まるし、誠実な申し出を館内の他の方々にお伝えできる。そして居住者の誠実さは伝播し、コミュニティの一員としてよりよい住環境を実現するために貢献する意識が芽生えると思う。

さらには、管理員さんやフロントを励ますことにもなるのだ。

ガラスの破損で心あたたまる

マンション管理にまつわるこのような心温まるエピソードは、ガラス製部材でなければ経験できないだろう。鉄製の壁をいくら蹴っても割れないし破片も飛び散らないのだから。

本当にうまいこと設計されているな。

NPO法人 鹿児島県マンション管理組合連合会

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