異音問題に首を突っ込み、パンドラの箱を開けてしまった苦い経験

異音の問題で理事会おおいに盛り上がる

 某マンションでは、この日も特に誰からも意見や提案が出ることもなく、理事会が終わりかけていた。私が閉会を告げようとした時、一人の理事が発言した。

「最近、早朝に何かが破裂するようなパーン!と言う音が聞こえますが、何か設備が故障しているのではないでしょうか?」と。

これを皮切りに、

「確かに変な音がする」

「いや、何も聞こえない」

「西から聞こえる」

「いや南からだ」

「明け方ではなく日中に聞こえる」など話が膨らみ、重大な故障につながるとまずいので調べてほしいということになった。

その音は、種類や聞こえる時間帯がまちまちで、発生源も定かではなかった。このため、全戸を対象に「異音」に関するアンケートを実施して調査することになった。

「音」問題、解決を模索する

 異音についてのアンケート・・・。わたしは頭を抱え上司である係長に相談したが、上司からは「音の問題に首を突っ込むのはやめておけ」というアドバイスが返ってきただけだった。

 しかしながら、アンケートしましょうと理事会で決まった手前、放置出来ない。仕方なく、私は上司には黙ってアンケートを実施した。

 予想に反して、アンケートへの回答率は高く、関心の高さがうかがえた。

どこかの部屋から聞こえる音や、近隣のベランダから聞こえる話声、はたまた近隣で行われている道路工事の音など、様々な「音」への苦情が混ざっていたが、やはり理事会で話題になった「明け方の破裂音」を指摘する人が多かった。

そして、中にマンションに隣接する高齢者施設から音が発していると指摘する回答があった。

 わたしは、その施設の事務所に出向いて「おたくの施設から朝方異音がしているのではないかと言う話がありまして・・・」と切り出した。

当日は施設長不在で回答を得られずに空振りに終わったかと思われたが、数日後電話があり、

「施設の屋上に設置している厨房ファンからの異音が原因だった」と告げられた。すぐに部品を交換したので、もう音は出なくなったと。

 なるほど、理事会で指摘のあった「異音」と内容は符合していた。わたしはマンション内に「異音の原因と解消のお知らせ」を掲示した。

一件落着!?

 ところが、これで一件落着とはいかなかった。

解決した「異音」の他にも、どこかから聞こえる「音」の原因を突き止めて解決してくれとの要望が噴出してしまったのだ。

これは、「音」に関するアンケートを実施してしまったからだった。

上司の「やめておけ」というアドバイスはこのことだったのだ。

 そもそも、管理会社は共用部分(住戸内以外のマンションの部分)についてのみ、管理の対象としている。

今回の異音も発生源がマンションの外であり、管理会社が対応する必要はなかったのだ。住戸内からの「異音、騒音」についても同様だ。

「マンション住人を悩ますどこかからの音問題」に安易に首を突っ込み、パンドラの箱を開けてしまったのか?!わたしは大いに困惑した。

 その後、アンケートの対応に四苦八苦になったわたしは、経験豊富な上司のアドバイスがいかに的確かを痛感することとなった。

資料提供:株式会社ビル新聞社

あとがき

 わたしのコラムには、何人かの係長が登場する。多くの場合、この話に登場する係長だ。

 わたしのマンション担当者としての職歴において、この係長から教育された期間が一番長く、尊敬する師である。

 しかし、時に師の教えを破って業務に突き進んだことがある。たいてい、”言った手前引き返せなかった”ためだ。

 師匠のアドバイスに従わずに独断で行た結果、なんども痛い思いをした。あるときは、某仲介業者から出禁(電話もしてくるな)を言い渡されたこともある。

 師匠は、アドバイスに従わないわたしの性格をわかっていたと思う。いつも何も言わずにフォローしてくれた。

 しかし、この「異音」問題にしても他の失敗にしても、私が成長するよい機会になったことは間違いない。

 師匠の「やめておけ」とのアドバイスも、「失敗しても助言をくれる」という信頼は、挑戦する勇気の源でもあった。

 失敗談を書くたびに、師匠への感謝の念を再確認する。

 

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