マンション敷地外の「もめる建物」への対応は、管理会社の業務外

隣地に建設中の建物は・・・?

 一時期、保育園や保育所の子供たちの声が騒がしいと言って、地域住民の反対にあい、建設が中断したり白紙にされたりするというニュースが話題になった。

 マンション周辺でも、「揉める建物」の建設計画が持ち上がることは多々ある。

 大通りの向かいに葬儀場が建設されることになったマンションでは、こんな近くに葬儀場だなんて!!と理事会で相当な話題になった。

女性理事からの、
「隣にパチンコ店ができただけでも腹立たしいのに、次は葬儀場なんて!知っていたら買わなかった。」
という発言を皮切りに、議題から脱線し、
別の理事は、
「夜になると、ライトで浮かび上がった葬儀場のが窓から見えることさえ腹立たしい!管理会社の親会社が建設しているのだから、何とかしろ!」
と言いうのだ。

「直線距離で100mも離れていますよ。隣に葬儀場ができたマンションもあるんですよ。葬儀場の需要が高まっているんですね・・・」と述べたところ、
「管理会社は何もしないのか?!」と言われ、
「合法的に建設されている建物に対して、管理会社ができることは何もありません。」と発言したら、万事休す。理事会を一層アウェイに変えてしまった。

新しい公害?!大規模太陽光発電パネル設置計画

 別のマンションでは、大通りを隔てて向いのサッカースタジアムに建替え計画が発表され、スタジアムの屋根全面に太陽光発電パネルが設置される予定だという。

向かいに立つマンションは光害に遭うのではないかと不安を覚えた居住者から、
「建替え計画責任者に問い合わせて確認しろ。」という電話が入った。

「なぜ自分で問い合わせない?!自分のマンションでしょう・・・」と、心の中で叫んだが、
「問い合わせてみますね」
と、ここでは穏便に電話を切った。

建設計画担当者を探し出し、詳しく聞いてみると、計画は未定で、決まれば地域説明会を開催するという。

建設予定地の向かいのマンションにも説明会の案内をポスティングするように依頼し電話を切った。

問題解決能力を問われる管理組合

 隣に建設された激安スーパーの警備員配置計画変更を協議したマンションでは、「協議内容を本社に持ち帰り返答する。」と約束したスーパー担当者が、結局何の返答もよこさなかった。これに対して
「管理会社の責任だ。」と追及されたこともある。

 マンション周辺の問題視されがちな「建物」について、愚痴を並べてうっぷんを晴らすのが目的であれば、管理会社の責任を追求することで少しは効果があるかもしれない。
しかし、本気で解決を目指すのであれば、取り組む主体は管理会社ではなく管理組合であることを自覚すべきだ。

 なぜなら、管理会社の行う業務に敷地外の「建物」への対応などは一般的に含まれておらず、管理会社が積極的に取り組むはずがないのだ。

 重大事案に対してマンション外と交渉するような場合、所有者が一致団結して取り組む必要があるが、それは常日頃からマンション管理へ積極的な参加があって初めて実現するものだ。

 この力があれば、大規模修繕工事を始めとするマンションの大きなイベントに必ず効力を発揮するだろう。

掲載:株式会社ビル新聞社

あとがき

 管理会社が対応する業務は実はきっちり決まっている、という事実を理解している所有者さんは多くない。

 管理組合と管理会社の間で交わされる管理委託契約書には事細かく管理会社が「対応すること」が書かれており、記載のないものは範疇外だ。

 しかし、これは建前で現実的には契約に明記されていないものも、管理会社が何とかしていることが非常に多い。

 だが、隣地に建設される建物は、まさに管轄外だ。

 理事会で隣の激安スーパーや葬儀場建設の話が出ると、心が折れたものだ。

 なぜなら、取り組むべきマンションの課題よりも理事の皆さんの関心がはるかに高かったからだ。

 管理組合が取り組むべき課題は、隣に立つ葬儀場ではなく、所有者の管理組合運営に対する「無関心」のはずなのだが・・・。

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