知ってる?監事の監査方法

3月は多くの管理組合において年度末にあたる月です。3月を会計年度とする管理組合では、4月下旬に収支決算案が作成され、ここでようやく監事の出番となるわけです。しかし、監事の多くは何をどう監査すればよいか、分からないというのが本音でしょう。この記事では、管理組合の監事が行う監査について、その方法を詳しく説明します。

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1, 監事の監査

管理組合の監事は、組合の「業務執行状況」と「財産状況」を監査し、総会で報告する立場にあります。また、「業務の執行及び財産の状況について不正があると認めるときは、臨時総会を招集することができる」という強い権限を有しています。

しかし、一般的に臨時総会を招集することは稀で、会計年度終了後、監査報告書を提出し、総会で報告する職務を果たしてお役目終了となることが多いでしょう。

監事による監査は、管理組合のチェック機能の「要」です。適当に監査して、報告書に記名押印するようなことが、あってはなりません。とはいえ、不慣れな管理組合会計などをどこまで監査すればよいか判断が難しいでしょう。

そこで、「財産の状況」についての監査方法と、「業務執行状況」の監査方法を、それぞれご説明します。

2,財産の状況を監査する

財産の状況を監査する際に必要となる資料は下記4点です

  • 決算資料
  • 前期の通常総会議案書
  • 管理規約
  • 長期修繕計画書

決算資料の確認ポイント

チェック内容チェックする目的
貸借対照表の預金額と残高証明書の突合せ通帳の残高と貸借対照表が合致しているかを確認する
請求書と支払い実績の突合せ請求のない支払いがなされていないか、支払額と支払先は正しいかなどを確認する
貸借対照表から未収金・未払い金・仮受金のチェック長期に及ぶこれら科目は、できる限り解消させる

収支報告書のチェックポイント

チェック内容会計の種類チェックする目的
予算を大幅に超過or下回る科目の確認と原因追及一般会計
修繕積立金会計
予算間違い、資金計上忘れなどを確認する
駐車場収入が前期比を大幅に下回ってないか一般会計駐車場利用率の推移を確認する
高額な修繕費用が一般会計の修繕費から支出されていないか一般会計修繕積立金で行うべき修繕が一般会計から支出されていないか
総会承認のない修繕工事が修繕積立金から支出してなされていないっか修繕積立金会計総会承認のない支出がなされていないか
当期剰余金が赤字でないか一般会計管理費の値上げが必要かどうか判断する
次期繰越剰余金が赤字でない一般会計
修繕積立金会計
支出削減や値上げを判断する
長期修繕計画書の年度末予定額との乖離はないか修繕積立金会計長期修繕計画書の精度を判断する

上記を確認し、問題があれば対策を講じるよう、次期理事会に申し送ります。申し送りされた次期理事会は、何らかの改善策を講じる必要があり、次期監事はその改善内容を監査し、次期総会で報告します。

3,業務執行状況を監査する

監事は、下記3点の理事会の業務執行状況も確認する必要があります。

  • 理事長、その他理事は、その職務を適正に果たしているか
  • 管理規約および総会決議に則って運営が行われているか
  • 申し送りされた課題に取り組んでいるか ほか

監事は、理事の職務の執行状況を監査する役割も担います。例えば、理事長の職務である理事会の議事録作成や保管が適切になされているか、会計理事が現金の出納を適切に管理しているかなどです。また、理事会が総会決議や管理規約に則った運営が行われているかを監査し、問題があれば総会で報告しなければなりません。

例えば、

「監査の結果○○の値上げを検討する時期に来ていると思う」

「議事録の内容が適正とは言えない」

などです。

そして、来期の理事会に対策講じるよう申し送りし、理事会で改善を続けることで、組合運営の好循環が可能になります。

4,まとめ

監事は監査報告書に記名押印するだけの職務ではなく、責任重大な役職であることがご理解いただけたかと思います。今回ご紹介したチェックポイントを念頭に理事会に参加すれば、その職責を果たすことができるのではないでしょうか。

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