朝日新聞1面で報道された、大規模修繕工事を巡る重大事件

大規模修繕工事を巡る なりすまし事件

2025年6月27日、マンションの大規模修繕工事に関連した犯罪まがいの出来事が、朝日新聞の1面トップニュースで報道された。

『首都圏にあるマンションで、大規模修繕工事を目前に控えた管理組合の修繕委員会に委員として参加していた人物がいた。しかし、その人物は区分所有者ではないことが発覚し、管理組合は警察に通報。不法侵入の疑いで逮捕された。実はこの人物、マンションの修繕を請け負う某事業者の社員で、マンションの所有者になりすまして委員会に入り込んでいた。その上、この修繕工事の設計コンサルタントも、某事業者の元社員だった。大規模修繕工事を自社に発注させるための工作だったとみられている。』

この話は私が以前、このビル新聞のコラムで短期集中連載をした「大規模修繕工事シリーズ」と酷似している。

私が経験した、似た事件とは

このシリーズのコラムで、私は理事会や修繕委員会に紛れ込み、特定の事業者に工事を誘導する“組織”の存在を紹介した。

 参照▶コラム「大規模修繕工事をめぐる魑魅魍魎」(シリーズ、大規模修繕工事狂騒曲 第1話)

 参照▶コラム「管理員さんの、嫌な予感…」(シリーズ、大規模修繕工事狂騒曲 第2話)

大規模修繕工事に介入、手口の違い

今回報道された事件と、私の紹介した事例との違いは主に次の2点である。

①理事会・委員会への介入方法。今回の事件は、後の調査でマンション所有者の名義を借りた介入が判明したが、私の経験事例では、実際にマンションの一室を購入し所有者(居住実体なし)として関与していた。

②コンサルタントと工事業者の関係。今回の事件は、コンサルタントは「なりすまし」を送り込んだ工事業者の元社員で、両者にはつながりがある。対して私の経験事例では、コンサルタント業務は管理会社が受託しており、工事業者との関係はなかった。

このように二つの出来事には相違はあるものの、特定の事業者に組合側から工事を発注させるよう仕組まれていた。しかし、巧妙さと悪質さという点では今回のほうが上だろう。

 ▶「なりすまし」対策解説動画はこちら

より巧妙化する、介入手口https://www.youtube.com/watch?v=F_cY6FwvFic&t=1s

前述の通り、今回の事件で「なりすまし」の介入を許した裏には、言葉巧みに「潜入調査のため」と説明された、ある所有者によるアルバイト感覚の名義貸しがあった。この名義貸しをした所有者も警察の事情聴取を受けたが、管理組合の一員としては極めて不適切な行為と言わざるを得ない。とはいえ、大規模修繕工事を取り巻く複雑な事情を知らなければ、こうした軽率な行動を取ってしまうのも無理からぬことかもしれない。

それにしても、名義を借りてまでして委員会に入り込むとは、なんとも巧妙で悪質な手口といえる。そこまでする背景には、昨今の中古マンション価格の高騰もあると思われる。わざわざ住戸を購入してまで介入するのは、金銭的に「割が合わない」のだろう。

今回の報道では、なりすまし社員を送り込んだ某事業者の名前は明らかにされていないものの、記事には「本籍地」が何度も登場しており、ここから特定できるかもしれない。

管理組合を取り巻くあやうい環境

それにしても、犯罪まがいの行為をしてでも受注したい大規模修繕工事とは、いったい何なのか。

管理組合を取り巻く環境が、いかに危ういかということを如実に物語る事例といえるだろう。区分所有者の無関心をいいことに、高額な大規模修繕費を巡って熾烈な争奪戦が、今日も水面下で繰り広げられている。

株式会社ビル新聞社