高齢者向けマンション所有者が若返ると起こること
高齢者向けマンションの根幹を揺るがす事態とは?
マンション管理士として独立後、高齢者向けマンションの管理組合から相談を受けることがある。悩みの原因はここでも管理費の高騰だ。
そもそも高齢者向けマンションは一般的な分譲マンションとは異なり、特殊な施設や設備を持ち、管理費は相当に高い。そこへ委託費の値上げが行われ、さらに管理費が高騰するという問題が、今浮上しているのだ。
実はその高すぎる管理費が、高齢者向けマンションの根幹を揺るがす事態に発展することがある。それは、マンション居住者の若返りだ…。
想定外なのか?
管理会社でマンション担当者として働いていた時代に経験した、ある高齢者向けマンションの話だ。
そのマンションは、希望する居住者に三食の食事が提供できるレストランや大浴場が設置され、快適なシニアライフが送れると謳われていた。緊急時には24時間常駐する管理員が駆けつける体制が整えられ、廊下や共用部の空調は常に快適に保たれ、ヒートショックとは無縁の住空間だ。
これらすべての施設やサービスは莫大な維持費を必要とし、管理費は当然高かった。それでも、快適な老後を過ごすためにお金に余裕のある高齢者が終の棲家として選択すると考えられていた。
ところが販売から十数年の後、マンションの所有者の若返りが進んだのだ。それも10歳や20歳の若返りではない。70~80代が中心の所有者からリセールで取得したのは30代や40代だった。
何が起きていたのか
十数年の間に新築時に購入した高齢者が死亡したり、老人ホームに移るなどして売却が進んだが、比較的若い層が部屋を取得するという想定外の事態が起きていた。月額7万円を超える高額な管理費等が、部屋の価格を暴落させ、若い層でも取得しやすくなっていたのだ。
部屋を購入したはいいが、月々支払う管理費が異常に高く生活を圧迫する。調べてみると、自分たちが使わないレストランや大浴場の維持費に莫大な費用が費やされている。カラオケルームの通信費も、館内に流れるBGMも、24時間常駐する管理員もすべて管理費で賄われる。若い所有者たちが「ぜんぶ要らないんじゃねぇ?」と考えるのも自然な流れかもしれない。
ある年、30代の所有者が理事に就任したことで、高額な管理費の要因である施設・設備の廃止を巡る世代間バトルが勃発した。
世代間バトル勃発
「赤字続きのレストランを存続する理由はない!」
「レストランの赤字を組合の費用で補填するな!」
「カラオケルームも有線も廃止して、その上レストランも閉鎖しようなんて、マンションの価値を下げる気か?!」
「レストランや大浴場が要らないなら出ていけ!」
施設やサービスを維持したい高齢者と、管理費を安くするために廃止したい若い組合員との間の利害は真っ向から対立した。
管理会社の対応は?
一方管理会社は、この対立に関与しないどころか、委託契約を解除して去って行った。
組合が揉めていたからではない。24時間の管理員常駐体制の維持や大浴場の清掃や管理を行う人手の確保が困難になっていたからだ。
管理会社は、自らの「損得」だけが商売の基準だ。
入社間もない私が見たのは、組合と管理会社の間に開いた深い溝であった。

コラムあとがき
高齢者向けマンションに設置されていた施設や設備は、高経年化と共に廃止されていると考えて間違いない。竣工当初は目玉として売り出した、併設されたクリニックや駅までの送迎バス、カラオケルームにレストラン、これらすべてが廃止の対象となっていく。管理する費用の高騰が理由だ。
高齢者向けのマンションに多く設置されている大浴場は特に維持管理が難しく、管理してくれる管理会社が限定されてしまう。管理会社変更が困難なのだ。管理委託費の値上げは「言い値」になる恐れがある。
これらリスクを考えてマンションを購入している人はわずかだ。
